第11回 特別受益(2)

第11回 特別受益(2)

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前回は「特別受益」についてお話ししました。「特別受益」とは相続における公平性を保つために民法903条で定められている制度で、被相続人からの生前贈与や遺贈を指し、その分は法定相続分から控除される、というものでしたね。

さて、今回はその特別受益について、実際どうやって計算するの?というお話です。まず、その流れですが、
1:みなし相続財産を法定相続分(もしくは指定相続分)で分ける
2:それぞれの相続人が生前贈与や遺贈によって受け取った価額を差し引く
3:導き出された結果により、具体的な相続分を割り付ける
となります。
さて、計算の前にここで1つ重要なことが出てきます。被相続人から受け取った「贈与(生前贈与)」については、実際に被相続人から受け取った価額ではなく、相続開始時点での価額に評価替えをする必要がある、ということです。その点に気を付けてくださいね。では、ケーススタディーをしてみましょう。

被相続人Aが死亡し、相続人は妻B、子X、子Yである(法定相続分にて計算)。遺産は1億円。Aは遺言によって1,000万円を妻Bに遺贈した。また、子XはAから500万円を生前贈与として受け取っている(相続開始時点での評価額は2,000万円)。

このようなケースについて考えてみます。流れに沿ってみてくださいね。

①相続財産を計算するため、贈与分を加味する。
  遺産1億円+生前贈与分2,000万円(相続開始時評価額)
  = みなし相続財産1億2,000万円
 (※遺贈分の1,000万円は遺産の1億円に含まれている)
②相続財産を法定相続分で分ける
 妻B:1億2,000万円×1/2=6,000万円
 子X:1億2,000万円×1/4=3,000万円
 子Y:1億2,000万円×1/4=3,000万円
③特別受益を控除する
 妻B:6,000万円-1,000万円=5,000万円(遺贈分を差し引く)
 子X:3,000万円-2,000万円=1,000万円(生前贈与分を差し引く)
④遺産から遺贈分を差し引く
 1億円-1,000万円=9,000万円(遺贈分は相続開始とともに妻Bに移転しているため)
⑤以上の結果、実際の遺産9,000万円を下記の割合で割り付けることとなる。
 妻B:子X:子Y=5,000万円:1,000万円:3,000万円=5:1:3

特別受益の計算の流れはお分かりいただけましたでしょうか?遺贈と生前贈与の計算の場所だけは気をつけないといけませんね。

さて、ここで少し疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。「仮に多額の生前贈与もしくは遺贈を受けた場合、実際の相続の時に特別受益分を計算したらゼロもしくはマイナスになる場合もあるのでは?ということです。もちろん、民法ではその点も考慮しているようで、このような場合を「超過特別受益」というのですが、この超過特別受益を返還する必要はない(実際の相続分をゼロにする)としています(民法903条2項)。なお、その場合は、残りの共同相続人の間で相続財産を決定する方法が多く用いられているそうです。
では、この場合の計算を下記のケースで見てみましょう。

被相続人Kが死亡し、相続人は妻S、子X、子Yである(法定相続分にて計算する)。遺産は1億2,000万円。Kは遺言によって2,000万円を妻Sに遺贈した。また、子XはKから4,000万円を生前贈与として受け取っている(相続開始時点での評価額は5,000万円)。

①相続財産を計算するため、贈与分を加味する。
 遺産1億2,000万円+生前贈与分4,000万円(相続開始時評価額)
  = みなし相続財産1億6,000万円
 (※遺贈分の2,000万円は遺産の1億円に含まれている)
②相続財産を法定相続分で分ける
 妻K:1億6,000万円×1/2=8,000万円
 子X:1億6,000万円×1/4=4,000万円
 子Y:1億6,000万円×1/4=4,000万円
③特別受益を控除する
 妻B:8,000万円-2,000万円=6,000万円(遺贈分を差し引く)
 子X:4,000万円-5,000万円=-1,000万円(生前贈与分を差し引く)
④遺産から遺贈分を差し引く
 1億2,000万円-2,000万円=1億円(遺贈分は相続開始とともに妻Sに移転しているため)
⑤以上の結果、実際の遺産1億円を下記の割合で割り付けることとなる。
 妻B:子X:子Y=6,000万円:0:4,000万円=6:0:4
 ※子Yは超過特別受益となり、具体的な相続分はゼロとなる。

今回は以上2点の計算方法のお話でした。
生前贈与分は相続開始時に評価替えされることは「争族」が生まれる一つのポイントかもしれません。というのも、特別受益は何年、何十年前にも遡って考慮すべきことだからです。つまり、他の共同相続人との間で、「もらった、もらってない」という話が出ないとも限らないからです。生前贈与は「その時」に終わる話ではなく、長い目で見なくてはいけないわけですね。
ここでよく混合してしまうのですが、この特別受益は民法上の話なので、「相続税を計算する場合に加味される生前贈与財産は相続開始前3年以内のもの」という相続税法の話とは別の話ですので、お気を付けくださいね(その例外として相続時精算課税制度があります。こちらは何年も遡ります)。

次回は、特別受益とは対となる考え方で、被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に相続財産について考慮されるという「寄与分」についてお話します。

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