前回に引き続き「寄与分」の制度についてご説明します。
<参考>第25回「寄与分②」(2020.4.28)
今回は、寄与分の具体的な算定方法と特別の寄与制度について、2回に分けてお話します。
寄与分の算定方法は?
<CASE①>
Aには、妻Bと子C・Dがいる。
Aには、自宅の土地建物(2000万円)と1000万円の預金がある。
その後、Aは死亡したが、CはAの死亡前からAの家業を長年手伝ってきたため、Cに600万円の寄与分が認められた。
さて、この事例でBCDそれぞれの相続分はどのように算定されるでしょうか。前回確認した寄与分の条文を見てみましょう。
(寄与分)
第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2~4(省略)
下線を引いた部分が算定方法の記載ですが、要約すると算定方法は以下のとおりです。
①被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から寄与分額を控除した財産を、相続財産とみなす(以下「みなし相続財産」といいます)。
②寄与分を主張する相続人の相続財産は、①で計算したみなし相続財産の価額に相続分を乗じ、これに寄与分を加えた価額となる。他方で、寄与分を主張できない相続人の相続財産は、みなし相続財産に相続分を乗じた価額となる。
なお、寄与分はあくまでも「被相続人が相続開始時に有していた財産」の中で認められるものに過ぎませんので、持ち戻された生前贈与分は計算には含めません。
CASE①について具体的に計算してみましょう。相続分はBが2分の1、CとDは各4分の1です。
みなし相続財産は、2000万円(土地建物)+1000万円(預貯金)-600万円(Cの寄与分)=2400万円となります。そうすると、
Bの相続分は、2400万円(みなし相続財産)×1/2(Bの相続分)=1200万円
Cの相続分は、2400万円(みなし相続財産)×1/4(Cの相続分)+600万円(Cの寄与分)=1200万円
Dの相続分は、2400万円(みなし相続財産)×1/4(Dの相続分)=600万円
となります。
1点注意すべきは遺贈があった場合です。「寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。」(民法第904条の2第3項)とありますので、例えば、相続開始時の財産の総額が3000万円あり、そのうち2500万円が遺贈に供されている場合、寄与分は500万円の限度でしか認められません。他方で、過大な遺贈がなされ、それが相続人の遺留分を侵害する場合には、このことは寄与分を決める際の「一切の事情」(民法第904条の2第2項)として考慮されると考えられています。
次回は、特別の寄与制度についてご説明します。