第24回 特別受益④

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千葉 直愛

2020-03-24

第24回 特別受益④

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前回に引き続き、「特別受益」の制度についてお話いたします。

<ご参考>
第23回 特別受益③(2020.2.21)
第22回 特別受益②(2020.1.21)
第21回 特別受益①(2020.1.14)


今回は、前回の後半で紹介した、持戻し免除の意思表示に関する配偶者の特別な保護制度について詳しく解説します。

保護される配偶者の要件は?

CASE①  (1)夫Aと妻Bは50年来の夫婦であり、子C・Dがいる。Aには、自宅土地建物以外に特段の遺産はない。AとBは15年以上にわたり同自宅土地建物に居住してきた。 Aが死亡し、BCD間で遺産分割協議が行われているが、自宅土地建物はBに遺贈する旨が明記された遺言が発見された。 CとDは、自宅土地建物がBに遺贈されてしまうと、何も遺産が残らないので不公平だと考え、特別受益の主張をしている。 (2)(1)でABの婚姻期間が19年である場合はどうか。

CASE①でC、Dの主張が認められると、老齢のBは自宅土地建物から追い出される事となってしまいます。
このような不利益を防止し、配偶者を特別に保護するため、平成30年7月の民法改正で、新たに、民法第903条4項が新設されたことは、前回(第23回)の記事の後半で説明しました。
では、どんな配偶者でも民法第903条第4項によって保護されるのか?というと、実は一定の要件があります。
(特別受益者の相続分)
第九百三条 
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住
の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、
その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

上記下線部のとおり、「20年以上」連れ添った夫婦でなければ、持ち戻し免除の意思表示は推定されません。よって、CASE①(2)では持ち戻し免除の意思表示は認められません。

20年以上連れ添った老齢の夫婦であれば、配偶者が死亡した場合に年金以外の収入源を失った生存配偶者の生活保障を望むであろうという認識が、今回の法改正の理由となっています。

では、なぜ「20年」という区切りになっているのか。実はこれは、贈与税の特例制度とリンクしています。特例では、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与等が行われた場合、基礎控除(110万円)に加え、最高2000万円の控除が認められることになっています。同特例は平成30年相続法改正よりも前から存在した制度です。今回の相続法改正は、この特例とのバランスも考慮して期間要件を設定したものと考えられます。

「居住用」不動産?

CASE②  (1)CASE①(1)でAが長年個人事業主としてタバコ屋を営んでおり、Bと同居していた建物(床面積70㎡、3階建て)の1階を店舗として利用し、2階3階を居住用空間として利用していた場合はどうか。 (2)(1)の建物が床面積300㎡、3階建てのアパートで、タバコ屋店舗は1階のごく一部であり、ABが生活していたのは3階の一室、その余は賃貸物件として貸し出していた場合はどうか。室、その余は賃貸物件として貸し出していた場合はどうか。

民法第903条第4項にはもう一つ要件があります。自宅土地建物が「居住の用に供する」ものでなければならない、という要件です。

(特別受益者の相続分)
第九百三条 
4 婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住
の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、
その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。

民法第903条第4項の立法趣旨が、高齢化社会において年金以外の収入源を失った生存配偶者の生活保障にある、という点に照らせば、CASE②のような店舗兼住宅であっても、店舗部分と住宅部分を分けることが(被相続人の意思として)合理的であると考えられない場合には、店舗部分も含めた全体について、民法第903条第4項が適用される、つまり持ち戻し免除の意思表示が認められるものと考えられます。

一方で、生活保障という観点からすれば、CASE②(2)のような土地建物を、すべてBに帰属させ、CDに何らの取り分もないというのは不公平です。このような場合には、Bの自宅部分のみが持ち戻し免除の意思表示推定の対象となり、残部には同様の推定は働かないものと考えられます。



居住用不動産にはいつから居住している必要があるの?

CASE③  (1)CASE①(1)で、Aが遺言を作成した時点で当該自宅土地建物に居住していた場合はどうか。 (2)CASE①(1)で、Aが遺言を作成した時点で当該自宅土地建物は収益物件として利用しており、その後も数年間ABに居住予定がなかった場合はどうか。 (3)CASE①(1)で、Aが遺言を作成した時点で当該自宅土地建物は収益物件として利用していたが、遺言作成の翌月には引っ越しをして自宅土地建物として利用し始める予定であった場合はどうか。 

CASE③は、「その居住の用に供する」ことがいつの時点において必要であるか、という問題です。

(1)は、遺言を作成した時点で居住の用に供しているので、Aは持ち戻し免除の意思表示を含意しているであろう、ということは容易に推測できます。

他方、(2)では、ABの自宅は別途存在し、設例の不動産は収益物件として利用していたということなので、これを生活保障として特別に保護することはAの合理的意思解釈として考えがたいところです。

その点、(3)では、遺言作成時点では居住していなかったものの、その後すぐに引っ越す予定があったということですから、Aの合理的意思として持ち戻し免除の意思表示を推定することはできるでしょう。



このように、ケースバイケースの判断にはなりますが、居住の時期に関しては、客観的な事情に照らし「被相続人は遺言作成当時どのように考えたのであろうか」という、合理的な意思解釈の問題としてとらえ、分析することができるでしょう。


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千葉 直愛

京都大学法学部卒
神戸大学法科大学院修了

アーレスリアルエステート

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