今回は、遺言と私道についてご説明します。
1 私道
道路とは一般交通の用に供する場所のことです。行政が管理する道路は公道であり、私人が管理する道路は私道とされています。
道路については、道路を構成する敷地、支壁等に私権の行使をすることはできません(道路法第4条本文)が、一般交通の支障とならない所有権の移転、抵当権の設定等は可能です(同条但書)。
2 私道と隣接する土地との関係
私道を構成する土地が、その隣接する土地に付属した従物であり、主物である当該土地の処分に従うと考えられるのであれば、主物である土地のみを対象とした処分をすることで、同時に従物である私道を構成する土地も処分することができます。
しかし、私道は、上記のとおり私権の行使に一定の制約があるものの、原則として、その開設・廃止は私権の行使として行うことができ、私道を構成する土地についての所有者が処分をすることができるとされています。
よって、私道を構成する土地は隣接する土地の処分に影響されることはなく、私道を構成する土地それ自体を独立した財産として、相続等の処分の対象にする必要があります。
3 遺言による処分
遺産に私道を構成する土地が含まれる場合、その所有権を、独立した財産として遺言で処分することができます。他方で、私道を構成する土地の記載が遺言書から漏れると、遺産分割でその所有が決定されることになります。
たとえば、遺言で宅地をAに相続させる場合であっても、その宅地に隣接する私道を構成する土地の処分が遺言に含まれていないときは、Aはその私道を構成する土地を取得できません。Aがその私道を構成する土地を取得するためには、他の相続人と遺産分割協議をする等の対応が必要であり、その取得のための代償金の支払いが必要になる可能性もあります。
このように、遺言で特定の土地を相続させても、それと隣接する私道を構成する土地の相続が遺言から漏れてしまうと、後のトラブルや、相続人の予想外の負担につながる可能性があります。
4 適切な対応
上記のような事態を避けるためには、まず、登記済権利証、登記事項証明書及び不動産についての売買契約書等の資料を精査し、遺産に私道を構成する土地が含まれるか否かを十分に確認すべきです。
そして、遺産に私道を構成する土地が含まれる場合で、それを特定の者に相続させたいときは、遺言でその土地の処分についても明記することをおすすめします。
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