前回からの続き
前回は、相続土地国庫帰属制度の申請手続きについて、申請先や必要書類等を含め具体的にご説明しました。今回は、相続土地国庫帰属制度の申請が承認された後の負担金についてご説明します。
相続土地国庫帰属制度における負担金
(1) 負担金とは
相続土地国庫帰属制度の申請が承認された場合、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下「法」といいます。)に基づき、申請者に対して承認の通知と併せて負担金の額が通知されます。
(2) 負担金の趣旨
相続土地国庫帰属制度に基づき、国庫への帰属が承認された当該土地は、その後国が管理することになります。本制度の利用により、申請者は当該土地の管理費用の負担を免れることになりますので、その程度に応じて、国が負担することになる当該土地の管理費用の一部を申請者に負担してもらうというのが負担金の趣旨です。
かかる趣旨に鑑み、法は、国庫への帰属が承認された当該土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用を考慮して算定した額の負担金を納付しなければならないと定めています。
(3) 負担金の具体的金額
前述のとおり、負担金の具体的金額は、当該土地の種目や属する区域によって算定されることになります。
① 宅地
国庫への帰属が承認された土地が宅地の場合、その面積に関わらず、負担金は一律20万円とされています。
但し、当該宅地が、都市計画法に定める「市街化区域」又は「用途地域」が指定されている地域内に所在する場合、負担金は当該土地の面積に応じて算定されます。
② 田・畑
国庫への帰属が承認された土地が田・畑の場合、その面積に関わらず、負担金は一律20万円とされています。
但し、下記のいずれかに該当する田・畑の場合、負担金は当該土地の面積に応じて算定されます。
■ 都市計画法に定める「市街化区域」又は「用途地域」が指定されている地域内に所在する場合
■ 農業振興地域の整備に関する法律に定める「農用地区域」に所在する場合
■ 土地改良事業等(土地改良事業又はこれに準ずる事業であって法施行規則第15条に規定する事業)の施行区域内に所在する場合
③ 森林
国庫への帰属が承認された土地が森林の場合、負担金は当該土地の面積に応じて算定されます。
④ その他(雑種地・原野等)
国庫への帰属が承認された土地が雑種地や原野等の場合、その面積に関わらず、負担金は一律20万円とされています。
なお、法務省のウェブサイトに負担金の具体的金額の自動計算シート(Excelファイル)が掲載されています。
https://www.moj.go.jp/content/001380792.xlsx
(4) 負担金額算定の特例
申請者は、隣接する2筆以上の土地について一つの土地とみなして、負担金額を算定することを申し出ることができます。
例えば、国庫への帰属を申請する土地が隣接する2筆の宅地の場合、その負担金額は20万円×2筆=40万円となりますが(市街化区域又は用途地域が指定されている地域内に所在する宅地ではない場合)、この特例制度を利用すると一つの土地とみなされるため、その負担金額は20万円になります。
なおこの特例を利用できるのは、隣接する土地が同じ種目である場合に限られている点には注意が必要です。
また、この特例の申し出は、相続土地国庫帰属制度に基づく申請書提出時から、その申請が承認されるまでの間に行わなければならない点についても注意が必要です。
(5) 負担金の納付方法
前述のとおり、国庫への帰属が承認された場合、申請者に対して負担金の額が通知されます。この負担金の通知とともに負担金の納付に関する納入告知書が送付されます。
この納入告知書に記載されている負担金額を、期限内(負担金の通知が到達した日の翌日から30日以内)に、日本銀行又は歳入に係る国庫金を取り扱う金融機関へ納付することとなります。
なお、上記期限内に負担金が納付されない場合、国庫帰属の承認が失効することになる点については注意が必要です。
(6) 国庫への帰属
負担金が納付された時点で、当該土地の所有権は申請者から国へ移転します。
参考:法務局ウェブサイト「相続土地国庫帰属制度の負担金」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html
以 上