弊協会理事の江幡が執筆したダイヤモンド・オンラインに掲載された記事の要約版です。
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江幡吉昭 | 著者ページ | ダイヤモンド・オンライン
東京の不動産価格は本当に下がるのか?
最近、日銀の利上げをきっかけに「東京の不動産価格が下がるのでは?」と心配する声が聞かれます。金利上昇や人口減少など、不動産価格が下がる条件が揃っているように見えますが、実際にはそう簡単にはいかないんです。今回は、東京の不動産価格が下がらない理由について考えてみましょう。
1.株価と不動産価格の違い
まず、株価と不動産価格の動き方には大きな違いがあります。株価は経済ニュースや投資家心理の影響を強く受けて、短期間で大きく変動することがあります。たとえば、リーマンショックの時には株価が急落しましたが、東京の不動産価格は10%ほどの下落で済みました。つまり、株価が急落しても、不動産価格が同じように動くとは限らないのです。
不動産価格は、特に東京のような大都市では、需要が非常に安定しているため、大きく変動することは少ないです。東京は経済や文化の中心地であり、多くの人が仕事や生活のために集まります。このような背景があるため、短期的な経済の変動では、不動産価格が大きく下がることはあまりないのです。
2.東京都の人口と世帯数
次に、東京の人口動態を見てみましょう。日本全体では人口減少が進んでいますが、東京は違います。2040年頃まで東京都の人口は増加し続けると予測されており、2035年には世帯数もピークを迎えるとされています。特に文京区や杉並区など一部の区では、2045年以降も世帯数が増え続ける見込みです。
こうした状況から、東京では今後も一定の住宅需要が続くと考えられます。さらに、「大相続時代」と言われる今後、高齢者から子供世代へ資産が移転しますが、都心部の不動産が大量に売却されることは少ないでしょう。多くのケースで不動産は相続され、そのまま保持されるため、供給が急増することは考えにくいです。これも不動産価格が安定する要因の一つです。
3.日銀の利上げが不動産市場に与える影響
最近の利上げについても触れておきましょう。日銀が利上げをしたことで、住宅ローンの金利が上昇し、不動産購入が抑制されるのではと心配されています。しかし、実際のところ、日銀が継続的に利上げを続けるのは難しいと見られています。急激な利上げが経済全体に悪影響を与えることを日銀も理解しているからです。
また、利上げが不動産価格に与える影響も一様ではありません。たとえ金利が上がったとしても、不動産が投資先としての魅力を失うわけではないのです。特にインフレが続いている中では、現金よりも不動産を持つ方が価値を保つ手段として有利です。
4.東京の不動産市場は強い
最後に、東京の不動産市場は非常に強固だという点を押さえておきましょう。東京は国内外からの投資が集まり、需要が常に高いため、供給が追いつかない状況が続いています。土地が限られていることも、価格が下がらない理由の一つです。今後、首都直下型地震などの大きな出来事がない限り、東京の不動産価格は下がりにくい状況が続くと考えられます。
不動産価格が下がると期待するのではなく、東京の特性を理解し、今後の市場動向を見極めながら適切な投資を検討することが大切です。