第2回 遺言による信託

第2回 遺言による信託

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1 信託

信託とは、法律で定められた方法により、特定の者(受託者)が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいいます(信託法第2条第1項)。

2 遺言による信託

遺言による信託(遺言信託ともいいます。)とは、委託者が、特定の者(受託者)に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法(信託法第3条第2号)のことです。

遺言による信託により、委託者は、その死亡後にも、特定した目的のために自己の財産を活用したり、特定の家族を受益者(信託された財産から利益を受ける者)として指定することにより、その生活を保障したりする等、委託者の意思に基づいた財産の利用をさせることができます。
たとえば、財産管理が困難な認知症の配偶者、障害のある子、浪費癖のある子を受益者として、その扶養・介護・教育・生活のための財産管理(定期的に金銭の給付をする等)を受託者にさせることができます。

このように、遺言による信託は、死亡後の財産管理を可能にする方法です。

3 遺言信託の効力発生時

遺言による信託の効力は、当該遺言の効力の発生、つまり、遺言者の死亡のときから効力を生じることになります(信託法第4条第2項)。

4 受託者となるべき者の意思確認

遺言による信託は遺言者の意思に基づいて一方的に受託者を指定する行為であり、指定された者が受託者の就任を引き受ける義務はなく、引き受けるか否かは遺言のみでは不確実です。そこで、遺言者は事前に、受託者として指定する者に対して引き受ける意思を確認しておく必要があります。また、利害関係人は、受託者となるべき者と指定された者に対し、信託の引受けをするか否かを確答すべき旨を催告することができます(信託法第5条)。

5 委託者の地位の相続

遺言信託の委託者の相続人は、信託行為に別段の定めがない限り、委託者の地位を相続により承継しません(信託法第147条)。委託者の相続人と受益者とは、信託された財産について利害の対立が生じうる関係にあるためです。

6 信託銀行等における遺言信託とは異なる

信託銀行等が提供するサービスで、遺言書の作成のアドバイス、遺言書の保管、遺言執行までの手続を代行する業務です。こちらも「遺言信託」と呼ばれますが、法律上の「信託」、「遺言による信託」とは全く異なるものです。
死亡後の財産の利用を検討する際には、「遺言信託」という用語とその内容を正しく理解することが重要です。

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弁護士

早稲田大学法学部卒業
早稲田大学法科大学院修了

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