第16回 遺産分割<調停分割・審判分割>

第16回 遺産分割<調停分割・審判分割>

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前回は協議分割についてお話でした。共同相続人全員の合意があれば、法定相続分や遺言による分割方法の指定と異なる内容の分割もできる事、また遺産分割協議が長引いたときなどにおいて相続税の申告と納税はどうすればいいのか、その一つの方法についてお話しました。
今回は共同相続人による協議で遺産分割が整わなかった場合(いわゆる争族、ですね)、どのような手段があるのか、についてお話しします。

前回お話しした通り、遺産分割協議が長引くことで生まれるデメリットがあるにも関わらず、共同相続人間の確執などの存在により、なかなか協議が進まないことも多々見受けられます。そのようなときに頼りにすべき場所がしっかり用意されています。今まで相続についていろいろ勉強されてきた皆さんにとっては、もうお分かりですね。そうです、家庭裁判所です。

実は家庭裁判所で行われる遺産分割に関する手続きは2つあります。ひとつが「調停」、もうひとつが「審判」です。その根拠となる法律は次の通りです。

民法907条2項
遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。 

家事事件手続法244条
家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(~中略~)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。

家事事件手続きとは、婚姻・離婚や親権などを話し合うときの手続きのことをいいますが、遺産分割もこれと同じ扱いとなります。
それでは、まずは調停分割についてみてみましょう。
家庭裁判所に遺産分割に関する調停が申し立てられると、調停委員もしくは家事審判官と呼ばれる人が話し合いを斡旋してくれます。調停の流れは、
①相続人の範囲を確定する > ②遺言の有無を確定する > ③一応の相続分を確定する > ④遺産の範囲を確定する > ⑤遺産を評価する > ⑥特別受益の有無を確認する > ⑦寄与分の有無を確認する > ⑧相続開始時の具体的相続分を確定する > ⑨具体的相続分をもとに、各自の取得分額を算定する > ⑩遺産分割方法を決定する
となります。あとで重要になることなのですが、「遺産分割調停では、共同相続人全員が合意していれば、遺言とは異なる分割であったり、法定相続分とは異なる遺産分割を行うことも可能」です。

では次に、その調停が不成立に終わったときに移行する「審判分割」のお話です。
家庭裁判所は相続人から遺産分割審判を申し立てられると、次の流れに従って審判します。
①審判申し立てまたは調停からの移行 > ②当事者の主張をもとに争点を整理・調査 >③
審判(以降の新たな証拠の提出はできなくなる) > ④審判書の作成・交付 > ⑤審判の確定または不服申し立て(審判の日から2週間以内)
となります。
遺産分割審判は審判官(=裁判官)がその裁量によって遺産分割の内容などを判断します。つまり、調停が「話し合い」であり「融通が利く」のに対して、審判は「裁判所が決定を下す場」であり「融通が利かない」ということになるんです。
融通が利かないとはどういうことでしょうか?それは、遺産分割審判では、基本的に法定相続分どおりに遺産分割が行われる、ということなんです。例えば、以下のようなことも起こりえます。

被相続人Aが亡くなり(配偶者は既に死亡)、相続人XとYの兄弟で遺産を分割することになった(遺言書はなし)。生前から折り合いの悪かった兄弟であったため、遺産の分割をめぐり争いが生じ、ともに弁護士を立てて協議をしたがまとまらず、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てた。しかしながら、調停でも合意にいたらず、裁判所に審判分割となり、結果的に法定相続分での遺産分割(換価分割)となり、被相続人が暮らしていた自宅を処分することになった。

解説しますと、相続財産が自宅不動産のみというような場合、これを分割するには、代償分割(相続人の1人が不動産を取得して、ほかの相続人に代償金を支払う方法)や換価分割(不動産を売却して売却代金を分割する方法)があるのですが、前者の場合、相続人が代償金を用意できない場合、有無を言わさず自宅不動産を競売によって換価させることを命じられることがあるんです。遺産分割で自宅までなくなってしまう可能性も・・・。これではもう「困った」という話ではすまされないですよね。
これに対し「融通が利く」遺産分割調停では、代償分割や換価分割を含め、柔軟に分割方法を決めることができます。争族が起きてしまった場合、調停や審判のように、家庭裁判所が間に入ってくれるのはありがたいですが、そうは言ってもそんなにすんなりいくものではないようです。事案によって違いはありますが、解決するまでに短くても数か月、通常は1~2年程度の期間がかかるそうです。その間もずっと争族が続くのは嫌ですよね・・・。そして、さんざん時間をかけたあげく、審判となってしまい、結果として相続人の望まない結果になることも多いです。
こうしたことが起こらないよう、やはり終活では事前に遺言書を作成しておくことや早い段階で専門家のアドバイスを受けることなど、争族を予防する対策が重要ですね。



次回は遺言による遺産分割方法の指定についてお話しします。

 

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