遺言を作成する方(ご相談、ご依頼)が増えています。
自筆証書遺言、公正証書遺言を問わず、遺言を作成することは非常に意義のあることですので喜ばしいことですが、実際に相続が発生して、数多くの遺言を拝見しますが、公証役場の公証人が関与して作成する公正証書遺言ですら、遺言の内容が不十分であるケースが見受けられます。
せっかく遺言を作成しても、遺産分割協議が別途必要になったり、遺言の執行がなかなか進まなかったり、そこから揉め事に発展したりといった事態にもなりかねませんので、遺言の作成にあたってはぜひ専門家にご相談するようにしてください。
今回は、遺言作成における注意点をご紹介します。
①“ガード文言”は絶対に忘れずに
「●●銀行に預託してある預金は長男■■に相続させる。」
「★★の土地・家屋は妻◆◆に相続させる。」
このように遺言には、“遺産を誰に、どのように相続させるか”を明記することになりますが、もしも遺言に記載するのを忘れていた財産や、遺言作成後に取得した財産がある場合、その財産を誰が相続することになるのかが問題になります。
遺言に記載のない財産については、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が相続するのかを決める必要があります。争う族の多くは、この遺産分割協議において発生しており、遺言に記載されていない財産を巡っても、揉めることが多々あります。
ましてや遺言の内容に偏り(例えば、多く相続する人とあまり相続できない人がいるなど)がある場合は、争う族に発展する可能性は高くなるでしょう。
さて、そういった事態を防ぐためには、以下のような“ガード文言”たる一文を必ず記載するようにすることです。
「本遺言書に記載のない財産については、すべて■■に相続させる。」
遺言に記載するのを忘れていた財産や、遺言作成後に取得した財産があり、遺言にその財産の具体的な内容が記載されていなくても、このような一文があれば、指定した相続人(受遺者)が取得することになるのです。
このような一文や表現がない遺言は、意外と多く存在しているのです。
すでに遺言を作成されている方も、この点が抜け落ちていないか再度チェックされることをオススメします。
②“遺言執行者の指定”と“付言事項”も忘れずに
遺言執行者とは、その遺言を確実に実現させるための権限が付与される人です。
遺言で遺言執行者をきちんと指定しているのとしていないのとでは、相続発生後の遺言の実現(事務手続き等)にあたり大きく影響してくることがあります。せっかくの遺言の執行が滞ることがないよう、最も信用のおける家族や第三者を指定することをオススメします。
また、付言事項とは、なぜそのような遺言を作成したのか、その経緯や思い、望み、さらには家族への最後のメッセージを記すことをいいます。付言事項として、思いや望み、メッセージを残すことで、(不満を持つ)相続人の理解が得られたり、無用な争い、トラブルを回避できることもよくあります。付言事項は何を書いても自由(恨みや否定的なことなどネガティブな内容は避けるべき)です。
例えば…
「家族みんなのおかげで幸せな人生を送ることができたことに心から感謝しています。どうか末永く、家族が支え合って幸せに暮らしてほしい。また、財産は私の希望どおりに分けてほしい。長男の●●には大変な苦労をかけたので多く渡すことにした。どうかよろしく頼む。今まで本当にありがとう。」
せっかく遺言を作成するのであれば、不動産だけではなく、他の部分もきちんと記載すべきです。画竜点睛を欠くことのないようにご注意ください。