前回の記事に引き続き、今回も誰が法定相続人になるのかについてのルールを、詳しく見ていきます。
胎児は相続人になれるの?
被相続人(亡くなった人)の子供が相続人になることは、皆様ご存知かと思います。
では、被相続人が死亡した時点で、胎児であった子供は、相続人になれるのでしょうか?
民法は、胎児も相続人になることができると定めています。
(相続に関する胎児の権利能力)
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
では、次のような場合はどうなるのでしょうか。
CASE
夫Aの妻Bは現在妊娠5カ月である。夫Aは子供の誕生を待たずに、不慮の事故で死亡してしまった。葬儀の準備に追われるBのところに、夫Aの父Cと母Dがやってきて、借金で困っているので夫Aの財産を相続させてほしいと言ってきた。
先ほどみた民法第八百八十六条には第二項があります。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
もし、上記の事例で、妻Bの子が死産になってしまうと、相続人は配偶者と親ですので、B、C、Dが相続人になります。
しかし、死産ではなかった場合は、親CDは相続人にはなりません。
このような不安定な状況で、CDを相続人と考えて遺産分割協議をしてしまうと、後で子供が生まれてきた場合に、遺産分割協議をやり直すことになってしまいます。
そのため、胎児が相続人になり得る場合は、胎児が生まれてくるまで、遺産分割協議を待つことが賢明です。
内縁の配偶者や愛人は相続人になれるの?
被相続人の配偶者(夫、妻)が相続人になることは前々回説明したとおりですが、では、内縁の配偶者や愛人は、相続人になれるのでしょうか?
(配偶者の相続権)
第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
裁判所の判例は、一貫して、民法第八百九十条の「配偶者」に内縁の配偶者や愛人は含まれないと判断しています。民法上の「配偶者」は、あくまでも婚姻届を提出した、戸籍上の配偶者に限られるのです。
ただし、次のようなケースでは、例外的な判断があります。
CASE
Aには妻Bとの間に子Cがいるが、Bは30年前に病気で他界してしまった。その後Aには内縁の妻Dができて、AとDは30年来にわたって付き添って、同じアパートに暮らしてきた。アパートの賃借人の名義はAだった。
建物の賃借人が死亡した場合、賃貸借契約は消滅せず、賃借人の地位は相続人に引き継がれます。
そうすると、上記のケースでは、子Cが賃借人としての地位を引き継ぐことになります。
ところが、実際にアパートを使っているのはDです。
ここで、家主がDを追い出そうとした場合、DはCの賃借人としての地位を「援用」して、アパートに住み続けることが裁判例上認められています。
(ただし、事例判断なので、どのような場合でも継続居住が認められるわけではありません。)
これは、内縁の妻を相続人として認めるわけではありませんが、相続人になったのと類似の効果を、生活保障の観点から裁判所が認めたものと考えることができます。
以上
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