自宅のリフォームが結果的に相続の税金対策になる”と聞くと『そんなバカな』と思う方も多いでしょう。
“リフォームと相続”一見聞きなれない組み合わせですが、意外とメリットがあるので、今回取り上げたいと思います。
相続対策は『評価減対策、分散対策、納税資金対策』の3つの側面があります。その中でリフォームは評価減対策になります。リフォームでお金が100万円単位で減れば、相続財産である現預金が減り、一方で、リフォームした家の相続評価額は“原則”1円も上がりません。よって、現預金が減った分、相続の評価減対策になるというわけです。
具体例で見てみましょう。
都内に40坪の戸建ての自宅と2,000万円の現預金をお持ちのご夫婦がいます。自宅の相続評価額は4,000万円。現預金と合わせて6,000万円。そのご夫婦は古くなった家に500万円をかけてリフォームしました。すると『6,000万円-500万円=5,500万円』となります。500万円の評価減対策になったわけですね。普通であれば500万円かけて家のリフォームをすれば、自宅の相続評価額は500万円上昇しそうなものです。しかし、原状回復的な側面であるリフォームであれば原則、自宅の相続評価額は増えないのです。
現預金は『100万円は100万円』として相続時に評価されますが『家は必ずしも500万円増ではない』のです。『現預金に多少余裕があり、自宅も古い、都内に戸建てがあるような方』は、相続税がかかる基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)以上の遺産になるケースも多いでしょう。よって、リフォームも相続対策の選択肢になるわけです。相続対策というと、『生前贈与や死亡保険金での非課税枠(500万円×法定相続人数)』などがイメージされがちですが、それ以外にも身近に選択肢はあるということなのです。
一方で、注意点もあります。増築など、大きな価値の向上を伴うようなリフォームは『自宅の相続評価に加算』されることもあります。また、『亡くなる直前のリフォーム』も家屋の評価にリフォーム額を加味することになりえます。例えば、父親が亡くなる直前に「何か相続税の節税方法ないか?」といって、慌ててリフォームするようなケースです。そのような場合、亡くなった後、相続税の申告を終えた後、税務署から「この500万円の出費はなんですか?リフォームなら、かかった金額の一部を課税財産として加えますね」と言われてしまう可能性があるのです。
一般的には亡くなる何年前までのリフォームならOKといった明確な基準や金額の縛りはありません。とはいえ、亡くなる3~5年以内の多額のリフォームは税務調査で指摘される可能性はあるでしょう。もちろん税務調査自体、すべての方に入るものでもありませんし、その確率は決して高いものでもありません(他の税目に比べれば高いですが)。しかし、上記の点は注意しておきたいところです。相続対策(終活も然り)は元気なうちに、なるべく早い段階から検討しておきたいですね。