第15回 遺産分割まとめ①~総論

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山下 昌彦

2024-12-06

第15回  遺産分割まとめ①~総論

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はじめに

過去においても遺産分割について様々なテーマの記事が掲載されていますが、令和3年4月の民法改正により相続財産登記が義務化されたことに伴い、相続財産登記のために長らく行われていなかった遺産分割協議を行う事例も増えつつあります。そこで、遺産分割における諸問題についてまとめて解説したいと思います。

遺産分割とは?

遺産分割とは、被相続人が死亡時に有していた財産(遺産)について、個々の相続財産の権利者を確定させる手続きを意味します。
相続人が複数の場合、相続財産は、各相続人の相続分に従って複数の相続人の共有に属することになります(民法第898条1項)。そのため、個々の相続財産について、各相続人の単独所有にする等、終局的な帰属を確定するための手続が遺産分割となります。
上記の遺産分割の意味に鑑みれば、相続人が一人だけの場合、被相続人の財産は、相続により当該相続人のみに帰属することになりますので、遺産分割は必要ありません。

遺産分割の2つのパターン

遺産分割には、以下の二つのパターンがあります。
① 被相続人が遺言によって遺産分割の方法を定めたり、第三者に遺産分割の方法を定めることを委託する場合(民法第908条1項)
② 相続人間の協議(いわゆる遺産分割協議)等によって行う場合(民法第907条)

遺産分割協議

(1) 遺産分割協議が可能な場合
共同相続人は、①被相続人が遺言により遺産分割を禁止した場合、又は②相続人間で遺産の全部又は一部についてその分割をしない旨の契約をした場合を除き、遺産の全部又は一部を分割する協議を行うことが可能とされています(民法907条1項)。

なお、①について、民法第908条1項は、被相続人は、遺言によって、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができると規定しているため、このような遺言がされた場合、相続開始時から最大5年間は遺産分割協議ができないことになります。
また、②について、民法第908条2項は、遺産分割禁止の契約の期間について、相続開始の時から10年を超えることができないと規定しているため、このような契約がされた場合、相続開始時から最大10年間は遺産分割協議ができないことになります。

(2) 相続人全員で行うことが原則
上記のとおり、遺産分割協議とは、複数の相続人による遺産の全部又は一部を分割する協議を意味します。したがって、遺産分割協議は、原則として相続人全員で行う必要があります。

(3) 相続人全員で行う必要がない場合
相続人が遺産分割前に、その相続分を他の相続人や第三者に譲渡した場合、当該相続人は遺産に対する権利者ではなくなりますので、遺産分割協議に参加する必要はなくなります。そのため、相続分の譲渡は、相続トラブルに巻き込まれたくない相続人にとっては有効な選択肢となり得るでしょう。
なお、相続分の譲渡は、相続があったことが前提となるため、相続放棄とは異なり、負債も相続することになります。よって、譲渡される相続分には負債も含まれる点には注意が必要です。

遺産分割の協議がまとまらなかった場合

相続人間で遺産分割協議が調わなかった場合、家庭裁判所に対して、遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てることができます。

① 遺産分割調停
遺産分割調停は、裁判所の調停委員が、相続人の間に入って話の調整を図るものです。調停は、あくまでも相続人全員の合意による解決を目指す手続きですので、話合いがまとまらない場合、調停は不成立となります。調停が不成立となった場合、自動的に遺産分割審判の手続に移行します。

② 遺産分割審判
遺産分割審判は、裁判所が、各相続人の主張を聞いた上で、遺産の分け方を判断するというものです。遺産分割審判の前に遺産分割調停を必ずしも申し立てる必要はありませんので、遺産分割調停を経ることなく、いきなり遺産分割審判を申し立てることも可能ですが、審判を申し立てた場合でも、調停手続に付されることがあります。

以 上

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弁護士

京都大学法学部卒業
甲南大学法科大学院修了

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