第59回 空家と相続

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熊本 健人

2022-11-04

第59回 空家と相続

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近年、空家の管理が不十分であることによって、防災性、防犯性の低下や居住環境の悪化などのいわゆる“空家問題”が社会問題化しています。令和2年12月の国土交通省住宅局の報告書によると、空家の取得方法は「相続」が54.6%と最も高い割合を占めています。
今回は、相続に関する空家問題について解説します。

空家特措法とは

空家の件数が全国で増加の一途をたどり、多くの自治体が空家条例を制定するなど、空家対策が全国的な課題になっていたため、平成26年に空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家特措法」といいます。)が公布され、平成27年から施行されています。
空家特措法では、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等を「特定空家等」と定義し、特定空家等に対しては、除去、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧告、命令が可能とされ、強制執行も可能とされています。

空家の管理

空家を相続した場合、相続人は、空家を取得する相続人が決まるまでの間、相続人全員で、自己が財産を管理するのと同等の注意をもって相続財産を管理しなければなりません(民法918条1項)。そのため、建物の修理や税金の支払等はもちろんのこと、建物が不法に占有されているような場合には、これを排除することも求められます。
 また、たとえば、老朽化により、空家の屋根やブロック塀が倒壊する危険があるなど、空家に通常備えるべき安全性が欠けていると認められる場合には、工作物責任という責任を問われる可能性もあります(民法717条1項)。

では、相続放棄をした場合は管理を行わなくてもよいでしょうか。
実は、相続放棄をした場合でも、直ちに空家の管理責任を免れるわけではなく、相続放棄をすることによって、次の順位の相続人が管理を始めることができる状態になるまでは、管理責任を負うことになります(民法940条1項)。
なお、次順位の相続人も含め全員が相続放棄をした場合には、裁判所で相続財産管理人が選任されることになりますので、それまでの間は、最終順位の相続人は空家の管理をしなければなりません。

以上の管理を怠り、空家を放置していると、塀や壁、屋根などが倒壊し、近隣住民や通行人に被害が生じるおそれがあり、場合によっては、損害賠償請求をされてしまうリスクがありますので、空家の管理にはくれぐれも注意が必要です。

空家の売却

空家を取得したいと希望する相続人が特にいない場合、空家の売却を検討することもあるでしょう。空家の売却は、共有物の処分行為にあたりますので、共有者である相続人全員の同意が必要になります(民法251条)。
空家の売却によって生じる利益については、譲渡所得から3,000万円を特別控除することが認められています。この特別措置は、2023年12月末までの時限立法となっており、併せて相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が必要要件となっています。

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熊本 健人

学習院大学法学部卒業
神戸大学法科大学院修了

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