第20回 限定承認

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前回は「相続放棄」をお話ししました。相続放棄をするパターンとしては、マイナスの財産が多い場合や家族全体のことを慮って…などがありましたね。また、相続人全員が相続放棄をしたらその財産はどうなってしまうのか?なども解説しました。
今回は、相続するけど条件付きで・・・という「限定承認」のお話です。
被相続人に多額のマイナスの財産があると分かっていれば、相続放棄を選択することでその財産を引き継がずに済みます(連帯債務者には責任が及びますので注意が必要です。)。しかし、被相続人の財産の状況によっては相続人が一度相続放棄をしてしまえば、自宅などを失ってしまう可能性もあるわけですよね。そこで出てくるのが限定承認、という制度です。
限定承認について名前は聞いたことがあるけど、なんだか難しい言葉で回りくどく書いてあって、よく分からない部分もあったのではないでしょうか?ここで、あらためて裁判所HPに記載されている限定承認についての説明を読んでみましょう。

(限定承認とは)被相続人の債務がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性もある場合等に,相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ(こと)<裁判所HPより>

つまり、「相続した財産の中にプラスの財産とマイナスの財産があったとしても、その相続した財産の中だけでマイナスの財産を清算すればいい」ということなんです。仮にマイナスの財産の方が多かったとしても「その差分を相続人自身の財産から持ち出す必要はない」ので相続人にとって不利益がないということなんですね。

「それなら相続が発生したら、みんな限定承認を選択するんじゃないの?」

と思われませんか?たしかに、単純承認したあとに、誰も知らなかったマイナスの財産が出てきました、なんてことがあっても、一度意思表示した単純承認を限定承認に変更することは原則出来ませんので、そんなことになったら目も当てられませんよね。相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、被相続人の財産のすべてを把握できればいいのですが、被相続人が終活などで財産の状況をまとめていればまだしも、一切管理を行っていなかった場合、この作業は容易ではありません。あっという間に3ヶ月が過ぎてしまいそうですよね。それであれば、あらかじめ細かいことを調べる前に家庭裁判所に限定承認の申述をしておけばいいわけです。

制度としてはまさにその通りです。そうすれば、あとからマイナスの財産が出てきても安心・・・なのですが、ここで限定承認のデメリットも出しておきましょう。実はこのデメリットが大きいため、限定承認は実際の相続の現場ではあまり活用されていないんです。ここでは大きくわけて4つのデメリットを例示します。

まず、1つ目のデメリットは「限定承認は相続人全員で行う必要があること」です。したがって、1人でも反対する人がいたときは申述をする事が出来ません。とはいえ、これはクリアできることが多いでしょう。
さて、問題はここからです。2つ目のデメリットは、「債務の清算に手間がかかる」ことです。マイナスとプラスの財産の範囲内で清算するわけですから、相応の手続きが発生します。家庭裁判所の手続きに従って行うことになり手間がかかる、というわけです。一方で相続放棄を選択すると、そもそも相続人ではないことになるので、清算手続きが発生しません。この清算手続きが面倒であるため、マイナスの財産があると分かった時点で相続放棄を選択している相続人が多い、ということでしょうね。
3つ目のデメリットは「被相続人に譲渡所得(所得税)が発生してしまう」ことです。えっ?どうして被相続人に税金が発生するの?と思われますよね。詳細は割愛しますが、制度上、限定承認を選択すると、その財産は相続ではなく相続開始時に相続人にその時の時価で譲渡したとみなされ、被相続人がその財産を取得したときよりも時価が上がっていれば譲渡所得が発生することになります。当然、所得があれば税金(所得税)を納めないといけませんよね。その場合は、「準確定申告」をする必要が出てきます(基本的には相続人が手続きを行います)。相続なのに所得税という余計な税金が発生する可能性がある、これがデメリットなんです。
4つ目のデメリットは、「相続税の減税制度を適用する事が出来ない」ことです。限定承認を選択すると、すべての財産は譲渡されたものとみなされるため、「相続税の特例」である居住用不動産の小規模宅地等の特例を受けることができなくなります。小規模宅地の特例って覚えてますか?相続の勉強や試験で必ず出てくる「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(特定居住用宅地等)は330㎡までは相続税が80%減額される」というものでしたね。これが受けられなくなるのは大きなデメリットとなります。場合によっては、仮にマイナスの財産があっても限定承認をせずに単純承認を選択して特例を適用すれば、その税金の減額分でマイナスの財産を返済できてしまうかもしれません。
以上の4つが大きなデメリットと言われています。たしかにそれぞれ大きなデメリットですよね・・・。

では最後に、家庭裁判所の統計で限定承認の実状を見てみましょう。

<家事審判・調停事件の事件別新受件数>
相続の限定承認の申述受理:722件
相続の放棄の申述の受理:205,909件
(※平成29年度司法統計『家事手続案内件数 全家庭裁判所』より抜粋)

こうみると限定承認は相続の現場ではほとんど活用されていない状況が分かりますね。しかし、ゼロではありません。メリット・デメリットを視野に入れて、単純承認・限定承認・相続放棄を考えることになります。
いったいどれを選択すればいいんだろう・・・と、財産の状況によって、とても難しい問題になりそうなのは一目瞭然ですし、相続開始後に残された家族が3ヶ月以内にそこまで考えるのはなかなか大変です。これから終活を行うときはそこまで考えて行えればいいですよね。相活士の皆さんにはそのお手伝いを担っていただきたいですし、さらには専門家への橋渡しになれるようになっていただければと思います。

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