第18回 遺産の評価①

千葉 直愛

2019-09-27

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 前回までは、どのような財産が遺産になり、あるいは遺産にならないのかについて、詳細に見てきました。(『相続の対象になる/ならない①~⑦』をご参照ください。)
 今回からは、遺産と評価された財産の「価値」が変動する場合に、これをどのように金銭評価するかという、「遺産の評価」の問題を確認していきます。

遺産の価値は、いつの時点で評価するの?


CASE① 
A女(80歳)には、法定相続人として、子B(60歳)、子C(55歳)、子D(53歳)がいる。子Bとその妻子は、A女と長年同居してきた。CとDは、それぞれ家庭を持ち、遠方で暮らしている。
2014年甲月乙日、Aが死亡し、B、C、DでAの遺産を分割することとなったが、Aには、預貯金はほとんど残っておらず、持ち家以外に目ぼしい財産がなかった。 B、C、Dは従前あまり仲がよくなかったこともあり、遺産分割協議は長期化したが、最終的な落としどころとして、Bの家族が従前Aと同居し、Aの自宅を住まいとしてきたこともあり、Bが不動産を取得し、本来C、Dが取得する不動産の各3分の1の価値相当額を、BがC、Dに支払うことになった。
ところが、この不動産の価値は、アベノミクスの影響で、ここ数年で大きく上昇していた。
A死亡時(2014年甲月乙日) 3000万円
遺産分割時点(2019年丙月丁日) 4200万円


 CASE①のように、複数の相続人で遺産分割をしなければならないにも関わらず、遺産が不動産一筆だけであるなどして、分割が困難であることは、実務上、頻繁にあります。
 不動産を法定相続分に従って共有にすることも、考えられなくはありませんが(B:C:D=1:1:1)、その後の権利関係が複雑になるため、決してお勧めできる方法ではありません(B、CまたはDに更に相続が発生した場合を想像してみてください。)。

 このような場合は、「代償分割」といって、特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人に対して代償金を支払う処理をする場合があります。

 代償金で清算をする場合に問題となるのが、遺産の評価です。

 CASE①でいうと、不動産の価値を3000万円とみた場合、C、Dはそれぞれ1000万円を取得することになりますが、4200万円とみた場合、C、Dはそれぞれ1400万円を取得することとなり、結果が大きく異なってきます。

 この問題について、遺産分割調停及び審判の実務では、遺産の評価は遺産分割時点で行うこととしています。CASE①でいうと、4200万円を基準に考えることになります。

 なぜそうなっているかは、具体的なCASEに照らしてみると合点がいきます。
 
 たとえば、CASE①で、3000万円を基準に遺産分割したとします。CとDはそれぞれ1000万円を取得し、Bは不動産を取得することになります。遺産分割直後に、Bが不動産を市場で売却したとすると、Bは4200万円を取得することとなり、C、Dに支払った代償金合計2000万円を控除しても、Bの手もとには2200万円が残ることになります。これは明らかに不公平です。 

遺産の価値が下落したらどうなるの?


CASE② 
CASE①で、不動産の価格が以下のとおり変動(下落)した場合はどうか。
A死亡時(2014年甲月乙日) 3000万円
遺産分割時点(2019年丙月丁日) 2400万円


CASE②のように、相続開始時点から時価が下落した場合に、相続開始時点の評価でC、Dにそれぞれ1000万円の代償金を支払うと、Bが不動産を市場で売却しても、Bの手もとには400万円しか残らないことになります。これもまた不公平です。

 以上のとおり、相続開始時点の評価を基準にしてしまうと、遺産の価値が上昇しても、下落しても、被相続人の誰かに価値の上下分のしわ寄せがいき、不公平、不平などが生じてしまいます。

 そのため、実務では、遺産分割時点を基準にしているのです。

以上

千葉 直愛

弁護士法人マーキュリージェネラル 所属  

アーレスリアルエステート

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