第17回 相続の対象になる/ならない⑦

千葉 直愛

2019-08-30

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今回は、相続の対象にならないと解されている「一身専属権」という権利について、見ていきます。

扶養請求権は相続財産?


CASE① 
A女(80歳)には子B(60歳)がいる。Bには子C(30歳)がいる。 Bは数年前にくも膜下出血で倒れ、半身不随の状態で、就労が不可能になった。A女はこれを不憫に思い、Bに対して、毎月、20万円を送金して、Bの生活を援助していた。 Cは大学卒業後、働かず、Bと同居して生活していた。 そのような折、Bの容体が悪化し、死亡した。 Cは、Aからの送金が止まると生活ができなくなるため、Bが有していた扶養請求権を相続したと主張して、Aに毎月20万円の支払を求めた。


 被相続人に属人的に帰属していた権利は、相続の対象になりません。
 これを、「一身専属権」といいます。


(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

 扶養請求権は、一身専属権であり、相続財産にはならないと解されています。

「扶養に関する権利義務は、特定の親族間において、厳に扶養請求権が認められる状態にあることを前提として認められるものであるから、その当事者の一方が死亡すれば、当然に消滅すべきものであり、これが相続の対象となることはない」(東京高判平成20年6月25日)のです。

財産分与請求権は相続財産?


CASE② 
A男とB女は性格の不一致により協議離婚をしたが、財産分与の協議は未了である。 そのような折、不慮の交通事故に巻き込まれ、B女が死亡した。 B女には、法定相続人として、子Cがいた。

 B女は、生前、A男に対して、「財産分与をせよ」という請求権(財産分与請求権)を有していたことになります。
 財産分与請求権も、一身専属権と解されており、子Cはこれを相続することはできません。

一方、次のケースを見てみましょう。

CASE③ 
A男とB女は性格の不一致により不仲となり、家庭裁判所の調停で調停離婚をした。調停条項においては、財産分与についても定めがあり、A男がB女に2000万円を支払うという条項が明記されていた内容で財産分与の協議が整い、両者が署名押印した協議書も作成済みであったが、A男が支払を渋っていた段階で、B女が死亡した。
B女には、法定相続人として、子Cがいた。

 一身専属権といえども、具体的な金銭債権に変質した場合には、ほかの遺産と同様、相続の対象になります。
 
 財産分与請求権は、一身専属権であり、遺産分割協議が整うまでは抽象的な権利に過ぎませんが、2000万円を支払う内容の調停の成立により、具体的な金銭債権になります。
 
 よって、子Cは、2000万円の財産分与請求権を相続することができます。

生活保護受給権は相続財産?


CASE④ 
A男(70歳)は長く重病を患い、就労ができないため、生活保護を受給している。A男には同居している妻B女(68歳)がいる。B女は長年A男の看病に専念し、就労していない。 そのような折、A男の容体が悪化し、死亡した。


 生活保護受給権も一身専属権と解されており、相続の対象とはなりません。
 本CASEでは、B女がA男の生活保護受給権を相続することはできません。
 B女が、就労不能ということであれば、B女は、自ら、新たに、生活保護の申請をすることになるでしょう。

以上

千葉 直愛

弁護士法人マーキュリージェネラル 所属  

アーレスリアルエステート

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