第25回 改正相続法②

吉田 隆一

2019-07-26

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皆さん、こんにちは!
今回も、前回に続き2018年に40年ぶりに大きな改正が行われ、今年から段階的に施行されている民法(相続法)の話をさせていただきますね。前回はその中から「① 自筆証書遺言の方式緩和(2019113日施行)」と、7月からスタートとなった「② 預貯金の払戻し制度の創設(201971日施行)」についてお話しました。
今回は「③ 遺留分制度の見直し(201971日施行)」と「④ 特別寄与制度の創設201971日施行)」についてお話します。

③ 遺留分制度の見直し(2019年7月1日施行)

皆さん、遺留分って覚えていらっしゃいますか?
遺留分とは、遺言等により最低限の相続財産を取得できなかった“一定範囲”の相続人が、“一定割合”の財産を取り戻すことができる、という制度でした。“一定範囲”、“一定割合”がそれぞれ気になる方は復習してみてくださいね。
遺留分は法定相続人にとってありがたい制度なのですが、この制度にも問題がありました。それは、仮に相続財産が土地や建物といった物理的に分割できない財産が主だった場合、遺留分の請求(遺留分減殺請求)が行われたときに、その建物を持分割合で共有することになる、という複雑な状況になってしまうことでした。こうなると被相続人の気持ちとは裏腹に、そこには争族の火種が生まれてしまうものです・・・。親族でない人同士が財産を共有することになったとしたら、なおさらですね。
そこで、今回の改正相続法は、この問題に対処しました。遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになり、お金で解決することが出来るようになったんです。こうして遺留分を請求することで財産の共有状態が生じてしまう問題を回避できるようになりました。
とはいえ、目的財産を相続した人も突然遺留分減殺請求(金銭の請求)を受けても、すぐに現金を準備ができない事もあるでしょう。そのようなときは裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができるので、対策がとれるようになっています。 

④ 特別寄与制度の創設(2019年7月1日施行)

次は、寄与分についてのお話です。
改正前の寄与分で問題となっていたのは、条文中に「共同相続人中に」という記載があることにより「相続人以外の人」は、どれだけ被相続人の介護などをしたとしても相続財産を取得することはできない、ということだったんです。もしかすると皆さんも身近で下記のような話を聞いたことがあるかもしれませんね。
 
<事例>

介護が必要な被相続人Aには、その介護のために同居する長男Xとその妻M、また遠方に暮らしていて介護にも非協力的な次男Yがいた。長男Xは5年前に死亡した。長男Xの妻Mは引き続きAと同居し、Aの日々の介護に尽くした。Aは遺言を残さずに2018年に死亡した。


このような事例があったとき、これまでの民法では長男Xの妻Mはどれだけ被相続人Aの介護に尽くしてきたとしても、自分自身は相続人ではないので、被相続人Aの死亡に際し、相続財産を取得することはできませんでした。
反対に、次男Yはどんなに遠くに暮らしていても、介護に非協力的だったとしても、相続人という立場になるので、相続財産を取得する事ができます(上記の例で言えば相続財産の100%を取得することになる)。
この不公平感を是正すべく、今回の改正で「相続人以外の被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合には、一定の要件の下で、相続人に対して金銭請求をすることができる」ようになったんです。仮に被相続人A2019720日に死亡した場合、長男の妻Mは相続人(次男Y)に対して、金銭の請求をすることができるわけですね。これで介護等の貢献に報いることができて実質的公平が図られるようになりました。
 
では最後に、今回の改正前から寄与分について規定していた条文904条の2と、改正後の特別寄与の制度についての条文(1050条)を読んでみましょう。


第904条の2 
1.共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、(中略)規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。 
2.前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。 
3.(省略) 
4.(省略)


第1050条 
1.被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。 
2.前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。 
3.前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。 
4.(省略) 
5.(省略)
 
これらの条文を見比べるとほとんど同じ文言ではありますが、1050条においては金銭の請求が認められるのは「被相続人の親族」としていますね。この少しの違いが大きな問題を解決することになるんですね。
介護問題はこれからの高齢化社会において、大きな課題の一つです。それを見越した改正とも見ることができますね。相続における争族を減らすために法律も進化している、といったところでしょうか。
それでは、次回も引き続き改正相続法についてお話しますね。

吉田 隆一

エフピーマトリックス代表取締役

アーレスリアルエステート

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