第16回 2019年7月1日に施行された改正相続法②

油良 俊寛

2019-07-16

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2019年7月1日に施行された改正相続法の中で、最も活用されることが多いと想定される制度として、前回は「預貯金の払戻し制度」について見てみました。
今回は「特別寄与制度」について見てみましょう。
 

「寄与分」という制度はありました

これまでも、被相続人への無償の療養介護や労務の提供(例えば、家族経営店や農業の手伝いなど)に尽くし、被相続人の財産の維持や増加に貢献してきたことが認められる相続人に対しては、遺産分割に際して相続分を増やす「寄与分」という制度が存在します。
ただし、その寄与分は相続人に限定されており、相続人以外の親族(典型例:被相続人の長男の妻)が被相続人に対して療養介護その他の労務の提供を行ったとしても、寄与分を主張したりすることはできませんでした。
そこで、実務上は、長男の妻が療養介護をしていた場合には、相続人となる長男の寄与分として評価することもありました。しかし、このケースで長男がすでに死亡している場合、長男の寄与分として評価することもできないため不公平が生じていました。
(長男の妻に財産を渡したい場合は、その他の手段として、養子にしたり、遺言書で遺贈したりするなどの対策が行われてきました。)

「特別寄与(料)」という制度が新設されました

こうした不公平感を是正するために、相続人以外の親族が、被相続人に対する療養介護その他の労務の提供により、被相続人の財産の維持または増加について寄与をした場合には、一定の条件のもと「特別寄与者」として相続人に対して金銭(=特別寄与料)を請求することができるようになりました。
特別寄与者になれるのは、相続人ではない親族です。この親族には、相続の放棄をした者や相続人の欠格事由に該当する者、排除された者(相続権を失った者)は除かれます。
なお、民法上の親族とは、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族を指します。(上記例の長男の妻も当然含まれますね。)
親族が対象ですから、内縁の妻や家政婦などが介護や看病をした場合は、特別寄与者になることはできません。

特別寄与料の金額

特別寄与料の金額は、まず特別寄与者と相続人の当事者間の協議により決めます。
例えば、義父(被相続人)を介護した長男の妻(特別寄与者)が、その他の兄弟姉妹(相続人)との間で特別寄与料を協議するわけです。これでは揉めてしまい、すんなり決まらないことも容易に想像できますよね。
当事者間の協議が成立しないとき、または協議ができないときは、相続が開始したことおよび相続人を知ったときから6か月、または相続開始のときから1年以内に限り、特別寄与者が家庭裁判所に対して協議に代わる審判の申し立てをすることができます。これを受けて、家庭裁判所は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して特別寄与料の金額を定めることになります。
具体的に特別寄与料の金額を定めるにあたっては、法律では明確な計算方法を定めてはいませんので、以下のような現行の寄与分(民法第904条の2)において、相続人が自ら被相続人に対する療養介護を行った場合と概ね同様の取り扱いがされると考えられます。特別寄与料がどのように計算されるのか、家庭裁判所における審判例にも注目していきたいですね。
 
金額の目安としては・・・
「療養介護の日当額 × 療養看護日数 × 裁量割合」となります。
 
例えば、介護ヘルパーを雇った場合の日当が1万円とすると、特別寄与者が300日間介護を行ったならば、300万円の特別寄与料を認める計算になります。
ただし、これまでは親族には扶養義務があるので、介護ヘルパーの金額が全額寄与分として認められるわけではなく、家庭裁判所の裁量によって割合的に減額されることが一般的です。(裁量割合)
例えば、上記の例であれば、3割減として特別寄与料を210万円などとします。どのくらい減額されるかはケース・バイ・ケースです。
 
なお、特別寄与者には、あくまで相続人に対する特別寄与料の請求権のみが認められています。
遺産分割協議については、これまでどおり相続人だけで行うこととされており、相続人ではない特別寄与者は遺産分割協議には参加できません。

特別寄与料の税務上の取り扱い

特別寄与料については、遺贈により取得したものとみなして相続税の課税対象となります。
一方、これを支払う相続人の課税対象価格からは控除されます。
なお、相続税の申告後に支払うべき特別寄与料の額が確定した場合には、確定後4カ月以内に更生の請求をすることができます。

寄与分(特別寄与料)と相続税の計算

◆寄与分がある場合の相続税計算例を見てみましょう。
相続財産は12,000万円で、法定相続人は子ABCの三人で、財産を法定相続分で分ける。
なお、子Aには寄与分3,000万円がある。
みなし相続財産:12,000万円 - 3,000万円 = 9,000万円
A 9,000万円 × 1/3 3,000万円 = 6,000万円
B 9,000万円 × 1/3 3,000万円
C 9,000万円 × 1/3 3,000万円
 
◆特別寄与料がある場合の相続税計算例を見てみましょう。
相続財産は12,000万円で、法定相続人は子ABCの三人で、財産を法定相続分で分ける。
なお、子Aの配偶者には特別寄与分300万円がある。
みなし相続財産:12,000万円 - 300万円 = 11,700万円
A 11,700万円 × 1/3 3,900万円
B 11,700万円 × 1/3 3,900万円
C 11,700万円 × 1/3 3,900万円
Aの配偶者 300万円

特別寄与料を請求するためにしておきたいこと

特別寄与料を認めてもらうためには、被相続人への貢献度合いを考慮してもらえるだけの判断材料が必要になると考えられます。判断材料として、日付や金額などの詳細、介護日記などの日付がある記録は効果的です。
交通費やおむつ代などの実費に関しては、レシートや領収書で記録を残しておきましょう。
また、それらを兄弟姉妹などの相続人と共有しておくとさらに効果的です。
以下のものを意識して残しておくことをお勧めします。
・日付や出費の分かる介護日記などの記録
・薬代やおむつ代、タクシー代など交通費のレシートや領収書
・被相続人とのメールなどでのやりとり
 
今回の「特別寄与(料)」制度の新設により、被相続人に尽くした方に公平に財産を譲れるようになり、相続人以外の親族の苦労が報われることが期待されますが、その一方で、特別寄与分の請求によって相続人が受け取る相続財産が減るため、親族および相続人間でトラブルが発生することも予想されますので、“争う族”を避けるためにも、日頃から介護をされている方との話し合いや、ご本人による遺言書の作成などが重要になってきます。
 

油良 俊寛

兵庫県出身
神戸大学経営学部卒業

アーレスリアルエステート

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