第17回 遺言による遺産分割方法の指定

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前回は調停分割・審判分割のお話でした。調停分割の流れ、審判分割の流れを例示しましたが、争族が発生し、相続人間で解決せずに審判まで行くと融通が利かなくなってしまい、結果として相続人の望まない結果になることも多い、ということでしたね。そして、こうしたことが起こらないよう、終活では事前に遺言書を作成しておくことや早い段階で専門家のアドバイスを受けることなど、争族を予防する対策が重要とお話させていただきました。
そこで今回は、遺言による遺産分割方法の指定についてお話しします。ここでいう、「遺産分割方法の指定」とは、法定相続分の範囲内で『相続財産をどのように配分するか』についての方法を指定することを念頭にしています。
 
遺言による遺産分割方法の指定の法的根拠は民法908条です。

第908条
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。

この条文は、相続人間で遺産分割協議が行われることを前提に、分割の方法を定めて遺言で指定するためのものです。基本的には、遺言によって財産などが各相続人に移転するわけではなく、遺産分割協議の成立によってはじめて財産が移転する(相続時に遡る)ことになります。
なお、後半部分については、実は以前にもお話しています。「遺産分割を禁ずることができる」という条文について、争族が発生することを見越して、遺産分割をするまでに時間的な猶予を設けて、その間に相続人の関係修復を期待することができる、というお話でしたね。
それでは、今回は「遺産の分割方法」について、以下のような遺言のケースで考えてみましょう。

被相続人Aが死亡し、妻Wと子X・子Yが相続人である。Aは遺産問題が起こることを懸念して事前に遺言書を作成していた。その内容は「遺産のうち、甲土地はX、乙建物はYが相続し、Wは乙建物に生涯無償で居住できることとし、残りの財産は各自平等になるように分配するように」との一文を残した。

遺言により財産の分割を指定するという指定相続分は、法定相続分よりも優先されるため、このような遺言も有効になります。このようにどの遺産を誰に相続させるかを具体的に遺言として残しておけば、遺産分割でもめることがきっと少なくなっていきますよね。そのためには財産と属性をあらかじめしっかり把握しておくことが重要です。さらに、把握するのに必要なことは・・・、そうですね、終活です。
ちなみに、上記のケースは現物分割の例でしたが、換価分割や代償分割を指定することも可能です。
 
では、次のような遺言のケースは有効でしょうか?

被相続人Aが死亡し、子X・子Y・子Zが相続人である。Aは「財産の全てを子Zに譲る」との公正証書遺言を残していた。

全ての財産を特定の相続人が相続するというケースは有効か、ということですが、こちらももちろん有効です。遺言で指定された相続人が、全ての遺産を遺産分割することなく直接取得することになります。
何度も繰り返しますが、遺言で指定された遺産分割方法は一定の拘束力を持っているので、これと異なる分割をするためには、相続人全員の合意が必要となります。いわゆる遺産分割協議ですね。ここで解決しなければ調停、さらに審判という流れになります。
 
遺産分割の指定において、誰もが納得するという遺言を残すことは非常に難しいかもしれませんが、被相続人の最後の意志をしっかり残しておけば、多少の不満はあってもその親族たる相続人ですので、それに従うこともあると思います(相続人間だけで遺産分割を決めようとすると納得できない時は従いませんよね…)。ですので、やはり遺言を残すことは非常に有効な相続問題解決方法になります。皆さんご存知の通り、遺産の額の多い少ないにかかわらず、相続問題(訴訟事例)が増えてきている状況ですよね。相続税の課税・非課税とはまったく別の次元で相続問題は発生しているんです。額の問題ではなく、分割方法が論点になっているという大きな証拠です。遺言を残すことの重要性はとても高いわけですね。終活の流行でますます需要が高まっていくであろう「遺言」。皆さんもあらためて知識として取り入れていってくださいね。
 
遺産分割について数回にわたってお話してきました。次回からは相続の放棄・承認についてお話させていただきます。

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