第1回『民事信託の現状について思う事①』

小林 智

2018-04-23

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信託の分野を担当させて頂く有限会社コンサルティングネットワークの小林智です。
 民事信託を活用した相続・事業承継のコンサルを中心に行う「信託実務家」です。「信託実務家」というのは私が商事信託を離れて民事信託のファイ―ルドでコンサルティングをスタートし始めた2014年夏以降から講演会の案内チラシなどで使い始めた名称です。その他、セミナー講師や士業の先生方向けに信託スキームの勉強会なども行っております。
 数年前から信託に関して本の執筆の依頼や雑誌の文書の掲載依頼など頂いておりましたがすべてお断りしてきましたので、文章を掲載するのは久しぶりです。
 信託の実務をやっていますと神経が実務処理に集中していますので、結果として文書作成締め切りに間に合わなくなる等、ご依頼者様にご迷惑をおかけすることを危惧し、長くお断わりしてきました。今回は実務を一緒に連携頂いている方からのご依頼で押し切られるような形でお引き受けした次第です。普段は実務中心でやっており、人様にお見せするような文章を書くことに慣れていないため、つたない文章になってしまうかもしれませんがどなたにでもご理解いただけるようにわかりやすく書くことを心がけたいと思います。何卒宜しくお願い申し上げます。

 さて、信託法が改正されてから民事信託(家族信託を含みます)は注目を集めてきました。非常に柔軟的に、かつオーダーメイドで財産管理・運用のスキームを構築することができるために相続や事業承継のコンサルをする上では、信託の知識を知っているのと知らないのとではかなり違ってくるはずです。だからこそ、民事信託が注目を集めている訳なのですが、課題が積み残されたまま、広がり過ぎているような気がしてなりません。このように少し上から目線で申し上げる理由として、実際、信託実務を監督官庁のもと金融機関で経験してきた視点から述べさせて頂きますと、今の民事信託では第三者のチェックが入った時にそういったチェックにとても耐えられないような民事信託が氾濫しているように感じています。何度も他の信託コンサルの方が指導した民事信託の信託契約書・スキーム等を目にする機会がありますが、その稚拙さに愕然としてしまうことも多々あります。このまま民事信託が広がってしまうと、将来、様々な問題が発生する可能性がありますので、民事信託の将来に危機感を感じずにはいられません。

 情報が氾濫している今の社会でどの情報を信用すればいいのかわからなくなることがあります。どのような経歴の方がどのような立場でモノを書いたりしているのか、話をしているのか非常に重要だと感じています。従って、信託の分野を書いていくうえで私の自己紹介からさせて頂きます。(どこの馬の骨かわからないよりも、わかっていた方が良いはずです。)




 大学卒業後、山一証券から経歴はスタートします。山一證券の自主廃業後は外資系保険会社に移籍します。外資系保険会社で相続の理論武装を叩き込まれ、実際に自分のクライアントに相続対策を絡めた保険コンサルを行っていく過程で、相続こそがクライアントにご迷惑をかけることなく、ご期待に応えられる財産管理・運用かもしれないということに気付き始めます。

 そんな折、当時金融機関がこぞってプライベートバンキング部を設立し始めたタイミングで、M証券が富裕層対応のプライベートバンキング部を新しく立ち上げるので、一緒にやらないかと先輩に声をかけていただき、富裕層に対して包括的な相続コンサルを行いたいとの思いから移籍します。相続については今でこそ銀行にしても証券会社にしても相続に力を入れていますが、1999年当時、資産税に特化する税理士さんですら少なかった時代ですから、金融機関の中では稀有な存在でした。当時、税理士、不動産業者向けのパッケージ化された相続の講座を受講した際に相続コンサルの大御所的な先生から「なぜ証券会社の人が相続を勉強されるのですか?」と不思議がられていました。資産管理・運用の観点からすると所得税にしても相続税にしても税率の高い人ほど、リスクが伴う運用を考えるのであれば、運用より先に納税額を減らす努力をしたほうが運用よりもはるかに効率的だということに気付いたからです。クライアントからも証券会社なのになぜ相続についてアドバイスしてくれるのかという物珍しさから多くのコンサルのご依頼を受けることになります。そうして証券会社のプライベートバンキング部に所属し約8年間相続コンサルに特化します。相続の机上の空論でなく相続実務については資産税に特化した税理士法人の中でエースとして既に有名だったA先生に案件ごとにご指導頂き、案件自体をご紹介し一緒に取り組んでいきます。A先生と相続実務をご一緒できたことで私の人生はかなり変わったと思っています。

 そうした中、どうしても解決できない相続案件や自分で納得できない案件にも遭遇することもありました。そんな時に外資系のS信託銀行のBさんから声を掛けていただきます。「証券会社で相続コンサルするのであれば信託銀行でやった方がコンサルの選択肢が広がるはずですよ」と説得されます(後にBさんがS信託銀行での私の上司になります)。外資系はシビアな世界だということはわかっていましたので、移籍することは考えなかったのですが信託に関心を持ちます。信託とはどんなものかを本を買ってきては手当たり次第読み漁ります。当時、信託関連で本屋さんに出ていた本はほぼすべて読んだはずです。

 信託を使うと相続コンサルの幅が明らかに広がることがわかりました。Bさんの言う通りでした。ある本でひとつの信託スキーム(以降、信託スキームSと記載します)に目が釘付けになり、非常に興味を持ちます。なぜならA先生と相続コンサルを行っていく過程でさまざまな相続スキームは一通り知っていたのですが、全く見たこともないスキームだったからです。そこでまず、税務的に問題ないのかをいつものようにA先生に相談します。A先生は信託スキームSを存じていました。さすがです!「特に問題ないでしょう!ですが、こんなレアなスキームをどうして?」というようなやり取りがありました。税務上はOKだと認識しました。次にS信託銀行のBさんに「このスキームは御行で組成可能か?」とお聞きしたところ「できますよ」とのことで、証券会社から信託銀行に移籍する決意をします。Bさんからお声をかけていただいてから6カ月以上経過しています。

 S信託銀行に移籍してから驚いたのが、信託の本で信託については理論的にはほぼ把握できていると思っていましたが、実際に実務をやる際には稟議書すら書けない、アシスタントの言っていることがわからないということが起こります。ペーパードライバーが初めて道路で運転した時に右往左往してしまうのと同じです。その時、信託の机上の空論と実務とのギャップに驚かされます。 それと、私にとって予想外のことが起こります。重大事件発生です!

 (次回につづく)

小林 智

(有)コンサルティングネットワーク代表取締役、信託実務家

相続終活専門士

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