第5回 相続人が相続人になれない場合② 廃除

千葉 直愛

2018-08-27

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  前回は、いくら相続人といっても、親を殺害したり、遺言を偽造したような人は、相続人になることができないという説明をしました。
 今回は、相続欠格ほどの事由がない場合でも、相続人に非行行為があった場合に、被相続人が非行行為を行った相続人を廃除することができる制度をご紹介します。

親に暴言を吐いたり暴力をふるったらどうなる?!

親を殺害するといった極端な行為(犯罪行為)にまで及ばなくとも、親に日常的に暴言をふるっていた場合などはどうなるのでしょうか。


CASE

Aは、早くに妻Bを亡くし独り身となり、現在80歳の高齢である。介護が必要な状況であるが、近くに暮らす長男CはまったくAの面倒を見ようとしない。たまにAの家に立ち寄った時には、暴力をふるったり、「早く死ね。80まで生きれば十分だ」などと暴言を浴びせていた。


 民法は、相続人が被相続人に対して「虐待をしたとき」「重大な侮辱を加えたとき」「その他の著しい非行があったとき」は、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができると定めています。

 上記と似たCASEで、Cの言動は廃除事由にあたるとした裁判例があります(大阪高決平成15327日)。

 ところが次のようなCASEでは、廃除が認められませんでした(名古屋高決定昭和46525日)。

CASE

Aは、いわゆる亭主関白で、妻にも子供たちにも横柄な態度で長年接してきた。Aの次男Bは、日ごろはAに反抗することはなかったが、ある夜、深酒をして、Aの屋敷にあがりこみ、日ごろの鬱憤を爆発させ、障子戸、ガラス等を損壊し、Aに暴言を吐いてその場を立ち去った。


 このケースでは、たしかに次男Bの表面的な行為はほめられたものではありませんが、BAから日常的に抑圧を受けていたことを裁判所が認定し、これを考慮したうえで、廃除事由には該当しないとしたものです。

親の財産を使い込んだらどうなる?!

次のようなCASEはどうなるでしょうか。

CASE

Aは中堅企業を経営する実業家で、個人資産も豊富であり、賃料収入目的で一棟マンションも保有している。70歳を過ぎて、そろそろ現役がしんどくなってきたので、長男のBに会社の経営とマンションの管理をすべて任せることにした。 ところが、Bは、事業資金や賃料収入をすべて大好きな競馬につぎ込み大失敗し、さらにはそれでも足りないのでさらに多額の借金をしてまたもや大失敗し、とうとう借金を返済するためにAの自宅を売却しなければならない状況になった。


 裁判所は、このCASEと似たような事例で、長男を相続人から廃除する請求を認容しています(大阪高決平成15327日)。

 ところが、次のようなCASEでは、真逆の判断が出ています。



CASE

Aが支配している同族会社に勤めるAの子Bは、会社のお金を長年横領し、その総額は5億円にも上った。Bは業務上横領の容疑で刑事裁判にかけられ、懲役5年の有罪判決が確定し、刑務所に服役した。


 裁判所は、このCASEと似たような事例で、Aが行ったBに対する相続人廃除の請求を認めませんでした(東京高決昭和591018日)。「虐待」「重大な侮辱」は、あくまでも被相続人(A)に対してむけられることが原則であり、A以外の第三者(このCASEでは会社)に対する非行行為は、それが有罪判決を受けるような重大なものであっても、なおそれだけでは相続人廃除をするだけの理由にはならないとされたのです。

廃除の手続き

  廃除は、家庭裁判所に対する申立てによって行います。
 家庭裁判所が廃除理由があると認めなければ、廃除はできません。
 被相続人の生前であれば、被相続人自らが、相続人の廃除を申し立てることができます。
 また、被相続人は、遺言の中で、廃除について触れ、被相続人の死後、遺言執行者に、廃除の請求をしてもらうこともできます。
 また、一旦は廃除の請求をしたものの、その後相続人との関係が修復するなどして、気が変わった場合には、被相続人は廃除の取消しをすることができます。 
(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
 


(遺言による推定相続人の廃除)
第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければならない。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生ずる。
 
(推定相続人の廃除の取消し)
第八百九十四条 被相続人は、いつでも、推定相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、推定相続人の廃除の取消しについて準用する。
 
以上  

(参考)

千葉 直愛

弁護士法人マーキュリージェネラル 所属 

相続終活専門士

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