第4回 自筆証書遺言(その2):自書とは

酒井 勝則

2018-08-16

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はじめに

  前回は、遺言の作成方法として最も簡易な方法だと思われる自筆証書遺言のメリット・デメリットと、その要件について、ご説明しました。今回も、有効な自筆証書遺言を作成するために守るべき要件について、引き続き検討を進めます。
 
前回も確認しましたが、自筆証書遺言の作成についての民法の規定は、以下のとおりです。
 
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 
上記の条文から、自筆証書遺言の作成の明文上の要件が、①遺言の全文を自書すること、②作成の日付を自書すること、③氏名を自書すること、④押印することであることが分かります。本稿では、以下、前回に引き続き、①の要件の内容をご紹介します。  


目が見えない人は、自筆証書遺言を作成することはできるの?(自書能力とは?)

 自書をするためには、遺言者が、文字を知っており、かつ、文字を筆記する能力を有することが必要です。これを、自書能力といいます。
 
 したがって、目の見えない人であっても、文字を知っており、かつ、文字を筆記する能力があれば、自書能力を有しているため、自筆証書遺言を作成することが可能です。ただし、他人の補助を受けて作成する場合には、次の項目「作成の際に他人に手助けしてもらった場合でも「自書」したといえるの?」の内容には、ご注意頂きたいと思います。

作成の際に他人に手助けしてもらった場合でも「自書」したといえるの?

 前回は、他人に遺言書の全部又は一部を代筆・代書・タイプしてもらったり、他人が作成した書類を遺言の一部としたりした場合には、自筆証書遺言としては無効となってしまう可能性があるという点を確認しました。それでは、病気や事故のために視力を失ったり、高齢のために手が震えたりしたために、遺言書を記載する際に他人に手を添えてもらって遺言を記載した場合、「自書」したといえるのでしょうか。
 
 過去の裁判例では、筆記に他人の補助が必要となる者が、他人の添え手を受けて書いた遺言は原則として無効であるが、以下の3つの要件を満たす場合には、自書の要件を満たすために有効としたものがあります。
①遺言者が、自筆証書遺言を作成時に、自筆能力を有していたこと
②他人の添え手が、⑴単に始筆・改行の際や、字の間隔や行間を整えるために遺言者の手を用紙の正しい位置に置くにとどまり、または、⑵遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は筆記を容易にするための支えを借りただけであること
③添え手をした他人の意思が運筆に介入してないことが、筆跡の上で判定できること
 残念ながら、上記の裁判例のケースでは、②を欠くために自筆証書遺言は無効とされていますので、他人の添え手を受けて自筆証書遺言を作成する場合には、作成の状況をビデオ等で記録しておく等、慎重な対応が必要だと思います。

どのような筆記用具を用いればよいの?

 遺言者が用いる筆記用具については、法律上、特に制限はありません。実務的には、簡単に消すことができ改ざんのおそれの高い鉛筆等の筆記用具は望ましくないといえます。
 また、カーボン紙を用いて複写する方法については、このような方法で遺言を記載することも、自書の方法として許されないものではないと判断した裁判例がありますが、別に入手した遺言者の文字を上からなぞることにより遺言書を偽造・変造される可能性がありますので、避ける方が賢明です。

パソコン等の機器を利用して自筆証書遺言を作成することはできるの?

 タイプライター・パソコン・点字機を用いて作成された遺言は、「自書」の要件を満たしませんので、自筆証書遺言としては無効となってしまいますので、注意が必要です。
 また、コピーをした複写版の遺言や、印刷文字を切り抜いて作成した遺言、文字のスタンプを利用した遺言についても、遺言者が自書したとはいえないため、自筆証書遺言としての効力はありません。また、ボイスレコーダ等の録音機器を用いた音声による遺言も、自書の要件を満たしませんので、自筆証書遺言としては無効です。

日本語以外の言葉で自筆証書遺言を作成することはできるの?

 自筆証書遺言において、「自書」が要件とされた趣旨は、全文・日付・氏名を自書させることによって、遺言者の真意を確保し、遺言の偽造や変造を防止する点にあります。したがって、外国語で記載された遺言であっても、自書された遺言の意味内容が正確に理解できるのであれば、「自書」の要件を満たすということができます。また、略字・速記文字によって記載することも可能です。
 
なお、自筆証書遺言の書式については、特に制限はありません。ただし、遺言書であることを明確にするために、表題として「遺言書」と明示することが望ましいと思います。また、用紙についても制限はありません。
 
 
 次回は、自筆証書遺言の作成の要件のうち、②作成の日付を自書すること、③氏名を自書すること、④押印すること、について検討します。

酒井 勝則

弁護士法人マーキュリージェネラル 所属 

相続終活専門士

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