第7回 贈与税の時効

田中 誠

2018-07-24

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今回は贈与税にも時効があるということを実際の判例をもとに見ていきたいと思います。
 
贈与税の時効は原則6年、故意の場合は7年、
 一般的な税金の時効は5年ですが、贈与税の時効は原則6年です。
 故意に(知っていてあえて)申告していなかった場合の時効は7年です。
 
贈与税の時効の起算日、
 贈与税の時効の起算日は、贈与を受けた翌年の申告期限である315日の翌日316日からとなります。
 贈与を受けた日から起算するのではないことに注意しましょう。
 
贈与税の時効の判例1、贈与税の時効が認められたケース(平成17330日、静岡地裁)

1、経緯、

 ある大手企業の社長には3人の息子(A=長男、B=次男、C=三男)がいました。
 Aは、昭和63年に株への投資のため自分が役員である会社から2億円を借りて株式投資を行いましたが、値下がりを続け失敗し返済できなくなりました。父である社長は、自分の会社の番頭格である経理担当に「出してやれ」と言って、平成2年に社長の個人預金からAの個人口座に2億円が送金され、Aは借入金2億円を返済しました。
 Bも平成2年に会社からの借金10億円で株式投資をしましたが、A同様に失敗し返済できなくなり、父である社長は「出してやれ」と指示し、平成3年にBの口座に10億円送金し、Bは借入金を返済しました。
 Cも株式投資に失敗し20億円の借入金があったため、これも「出してやれ」の一声で、平成2年にCの口座に送金し、Cは借入金を返済しました。
 社長が3人の息子に送金した金額は、合計32億円になりました。3人の誰もが、贈与契約書や金銭消費貸借契約書等の書類を作成していませんでした。贈与税の申告書も提出していませんでした。また、3人の誰もが社長から返還を求められたことは一度もなかったとのことでした。
 社長は平成8年に死亡し、相続税の申告でも処理していなかったため、税務調査で問題となりました。
 
2、3人の息子の主張、
  社長は送金の際、それが贈与であると明言していた。
  贈与契約書や贈与税の申告はしていなかったが、社長からお金の返還を求められたことはなかった。
  資金は、息子たちの個人口座に送金されており、確実に息子たちの管理下となっていた。
  贈与されたお金なので、社長死亡時点での財産ではなく、相続税の課税対象ではない。
  贈与税は支払っていなかったが、税務調査の時点で贈与税の時効も過ぎているので、贈与税の支払い義務はない。
 

3、税務署の主張、

社長が救済したかったのは3人の息子ではなく、取引銀行から返済を迫られた会社であり、32億円は返済資金として送金した。
贈与契約書がないので、贈与の合意はなく、借入金返済目的の立替金である。
この32億円の立替金(3人の息子への貸付金)は相続税の課税対象となる
 
4、裁判所の判決、
 32億円の送金した際に、社長は経理担当者に「出してやれ」と指示したが、これが贈与を意味していたかは明確ではなかった。
 経理担当者も3人の息子も、「出してやれ」という言葉は贈与を意味するものと理解していた。
 3人の息子は、社長から返還を求められたことがなく、返済する資金も無かったことは明確であり、立替金(貸付金)とはいえない。
 贈与税の申告をしなかったことが、贈与がなかったことに直ちに結びつかない。
 よって、32億円は贈与である。
 
結果として、32億円について、相続税の対象ではなく、贈与税の時効も過ぎているため贈与税の課税もできないことになりました。
 
贈与税の時効の判例2、時効が認められなかったケース(平成101025日、名古屋高裁)

1、経緯、

 父親は、昭和60314日日に、所有していた不動産を息子に贈与するという贈与契約書を公正証書で作成しました。
 この契約書作成後すぐには所有権移転登記を行わず、7年の時効を迎えた後、89か月後である平成51213日に登記の手続きを行いました。
 通常、贈与や売買等によって不動産の所有権が移る場合には、名義変更のための登記を行う必要があります。
この不動産の登記が行われた場合に、法務局から税務署に名義変更が行われた事実の情報が伝わることになっています。税務署はこの情報により贈与税などの課税漏れがないかを確認しているわけです。
 この父親(贈与者)は、税務署へ情報が伝わることを避けるため、計画的に時効期間が過ぎるのを待って登記の手続きを行ったわけです。
 この親子は、贈与契約書を証拠として、贈与契約書を作成した時点で贈与があったと主張しました。
 
2、裁判所の判決、
  公正証書による贈与契約書は贈与税負担を回避する目的に作ったものであり、実質的に不動産を贈与する意思はなかった。
  契約書がない場合の贈与は、不動産の引き渡しまたは登記がなされたときに成立したと考えるべきである。
  登記がされていない以上、息子はこの不動産を自由に活用し収益を得たり、売却したりすることはできなかった(その間贈与が成立しているとはいえない)。
 
結果として、公正証書で贈与をして時効まで待ったという主張は通りませんでした。
また、平成5年の路線価水準はほぼ史上ピークであり、現在からみるとバブル路線価であり贈与税は1.1億円にもなってしまいました。一方でたらればですが、昭和60年路線価はバブル以前であり、バブル時の何分の一であったと考えられます。
加算税も含めて何倍もの贈与税を払うこととなりました。
このように、当初から贈与税を免れることを目的として、意図的、計画的に行った手続きは非常に悪質でありますので、時効を主張することは難しくなります。

田中 誠

長野県生まれ
横浜国立大学経営学部卒業

相続終活専門士

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