第3回 自筆証書遺言(その1):自筆証書遺言のメリット・デメリット

酒井 勝則

2018-07-02

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はじめに

  前回は、遺言作成のための重要な要件である遺言能力について、ご説明しました。今回からは、具体的な遺言の方式ごとに、遺言をどのように作成すれば良いか、遺言の作成方式を検討します。
まずは、一般的な作成方法として最も簡易だと思われる自筆証書遺言について、ご紹介します。
 
  自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言書の全文・日付・氏名を自書し、これに押印することにより成立する遺言です。自筆証書遺言の趣旨は、全文・日付・氏名を自書させることにより、遺言者の真意に基づく遺言であることを形式上確保し、遺言の偽造や変造を防止しようというものです。
  それでは、他の方式と比べて、自筆証書遺言は、どのような点で優れており、また、どのような点が不利な点になるのでしょうか。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

  自筆証書遺言のメリットとしては、①証人等が不要で、筆記用具と用紙さえあれば、いつでも、どこででも、遺言者が単独で作成することができる、簡易な方式であることが挙げられます。
  また、②公証人等の第三者の関与も不要で、遺言者自らが自書して押印することのみで作成することができますので、特別の費用も掛かりません。
  さらに、③遺言者以外の者の関与が要件とされていませんので、遺言書の作成事実やその内容を一応秘密にすることが可能です。
 
  これに対して、自筆証書遺言のデメリットとしては、①その作成や加除その他の変更の方式が法律上厳格に定められているため、これを満たさない場合には、遺言が無効となる危険性が、公正証書遺言・秘密証書遺言と比べて高いことが挙げられます。実際問題としても、自筆証書遺言の作成・変更の方式を満たしているかどうかが、遺言者の死後、紛争の原因となることが少なくありません。
  また、②保管方法に制限がなく、どのような形で保管しても構わないことから、遺言を紛失したり隠匿されてしまったりする危険性があることや、作成において公証人等の客観的な立場にある第三者の関与がないために、悪意のある他者により改変されてしまう危険性があることもデメリットといえます
  加えて、③自筆証書遺言は、遺言者の死後、遅滞なく、家庭裁判所における検認手続、つまり、遺言書の形式的な状態を調査・確認する手続が必要になります。
  さらに、④法律の専門家とは限らない遺言者が単独で作成することが可能であるため、遺言書の文意が不明確となり、後日の紛争の原因となったり、遺言者の意図とは異なる形で遺産の処理が行われる結果になってしまったりする危険性がある方式だと思います。
 
  これらのメリット・デメリットを踏まえて自筆証書遺言の形式がご自身にふさわしい場合には、自筆証書遺言を作成するための要件を理解して、これに従って作成する必要があります。

民法が規定する自筆証書遺言の要件とは?

自筆証書遺言の作成についての民法の規定は、以下のとおりです。
 
(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 
上記の条文から、自筆証書遺言の作成の明文上の要件が、①遺言の全文を自書すること、②作成の日付を自書すること、③氏名を自書すること、④押印することであることが分かります。本稿では、以下、①の内容の一部を検討します。
 
自筆証書遺言の作成方式その1:「全文の自書」
自筆証書遺言の作成に当たって、最も特徴的な要件は、遺言する内容全文を、遺言者自らが記載しなければならないという点です。
これは、遺言者自らが遺言書を記載することにより、遺言書の内容が、遺言者の真意が表れたものであることが明確になると考えられるためです。
 
「自書」の要件を満たすためには、どのようなやり方で遺言を記載すればよいの?
 
他人に代筆してもらうことはできるの?
「自書」とは、一般に、遺言者が自らの手で筆記することと考えられていますが、手を用いることができない人が、口や足を使用して遺言を記載したとしても、遺言者が自ら記載してその真意が反映されていると言えますので、自書といい得ると考えられます。
 
他方で、他人に遺言書の全部又は一部を代筆・代書・タイプしてもらった場合には、「自書した」とはいえないため、自筆証書遺言としては無効となってしまいます。例えば、他人が作成した図面等を、遺言書の一部として用いた場合に、図面等の上に自筆の添え書きや指示文書等を付記したり、自筆の遺言との一体性を明らかにしたりすることによって、なお、自筆の要件を満たしていると判断した裁判例もありますが、後日の争いを防止する観点からは、全て遺言者自身の手で記載しておくことが賢明であるといえます。
 
次回は、自筆証書遺言の要件について、さらに確認を進めていきたいと思います。

酒井 勝則

弁護士法人マーキュリージェネラル 所属 

相続終活専門士

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