第3回 事業承継税制の見直し

油良 俊寛

2018-05-31

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非上場株式に対する相続税・贈与税の納税猶予制度の特例が設けられ、適用要件が今後10年間については大幅に緩和されることになります。
改正前まではクリアする要件が厳しいイメージのあった事業承継税制ですが、今回の改正ではそのハードルが下がり、さらに猶予される対象も増えました。それでは、内容を見ていきましょう。

改正のポイントは大きく分けて5つあります。

自社株を承継する際に贈与税と相続税がかからなくなる

一つ目は、この特例を適用した場合に自社株を承継する際に贈与税と相続税がかからなくなりました。現行の事業承継税制では、対象株式全体の3分の2が納税猶予の対象となり、相続の場合は80%が猶予の対象でした。つまり、約53%の自社株にかかる納税は猶予されますが、残りの約47%分に関しては課税されていました。ところが、今回の改正の「特例」では、対象株式の100%が猶予の対象となりました。それだけではなく、対象株式の全部が納税猶予の対象となりました。

「雇用確保要件」の実質的な撤廃

二つ目は「雇用確保要件」の実質的な撤廃です。現行では、特例を受けた後継者が会社を承継した後5年間は平均8割の雇用の維持が義務付けられています。
しかし会社には当然景気の波があり、常に雇用をし続けられるかどうかはわかりません。今まではこの要件が厳しく、事業承継税制を適用しなかった経営者が多くいました。
そして今回の改正では、その雇用確保要件を満たさない場合でも猶予は継続されます。
また要件が満たせなかった場合でも救済措置があります。要件が満たせなくなった理由書を都道府県にすれば万が一雇用が継続できなくなったとしても猶予していた税金を払う必要はありません。その理由が経営悪化等の場合には、認定支援機関による指導助言が必要になります。

経営環境を加味した減免措置

三つ目は、経営環境を加味した減免措置です。現行では、特例適用後に会社を譲渡・解散した場合には事業承継時点の株式評価額のまま猶予された相続・贈与税額の全額を納付しなければならないこととされています。
今回の改正では、経営環境が変化し、事業承継時点の株式評価額と比べて損失が出ている場合は納税猶予の取消事由が発生した時点での株式評価額を基に納税額を再計算します。その場合、元の株式評価額との差額は免除され、納税猶予した額よりも実際の納税額を圧縮出来るようになりました。

対象者の拡充

次に四つ目は対象者の拡充です。現行制度では、特例の適用が受けられるのは、原則として、一人の先代経営者から一人の後継者への事業承継が対象とされています。今回の改正では、これまでの原則的な事業承継に加えて、父親と母親、同族関係人からといった「複数人からの事業承継」や、父親から子Aと子Bへといった「複数人(最大3人)への事業承継」等の幅広いパターンの事業承継が特例適用の対象とされます。

60歳以上の贈与者から、贈与者の子や孫でない20歳以上の後継者への贈与も相続時精算課税制度の対象に

最後に五つ目ですが、事業承継税制の適用を受ける場合には、60歳以上の贈与者から、贈与者の子や孫でない20歳以上の後継者への贈与も相続時精算課税制度の対象となりました。
相続時精算課税制度は、60歳以上の贈与者から20歳以上の子または孫への贈与のみ対象となっていましたが、今回の改正では、60歳以上の贈与者から20歳以上の後継者への贈与も対象になりました。

相続税・贈与税の納税猶予制度の特例

この改正は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用されます。ただし、これらの特例を受けるためには、後継者・経営見通し等に関する承継計画を作成し、都道府県に提出するなどの手続きが必要にあります。
今回の改正はハードルが下がったものの失敗すると支払うべき税金の他、多額の延滞税等を納めることになりかねない為注意が必要です。
またこの制度は納税免除制度ではなく納税猶予制度である点についても注意が必要です。相続が発生してから慌てて対策を考えるのではなく早いうちから相続税を見据えた対策を行い、株価が高くなりすぎないようにする事が重要です。

油良 俊寛

兵庫県出身
神戸大学経営学部卒業

相続終活専門士

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