第14回 相続の対象になる/ならない④ 

千葉 直愛

2019-05-17

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前回の記事に引き続き、さまざまな契約上の地位が相続されるのか否かをみていきます。今回は、銀行関連の契約(預金契約、貸金庫契約)です。
 

預金契約上の契約者の地位は承継される?


CASE① 
A女は95歳で死亡した。A女には法定相続人として子B、C、Dがいた。A女の夫はすでに他界している。 B、C、Dは頻繁にA女に金を無心するなどしていたため、A女は子らに嫌気がさし、長年にわたり、子らと没交渉の状態であった。そのため、B、C、Dは、A女の死亡時、A女にどのような遺産があるのか、まったく分からない状態であった。 A女の家には、いくつかの預金通帳が残されていたが、従前取引があるといっていたE銀行の通帳がないなど、すべての通帳が揃っているのか、怪しい状況であった。


 金融機関で預金口座を開設すると、金融機関と預金者との間で、「預金契約」という契約が成立します。
 預金者は、金融機関に対し、契約上の地位に基づいて、過去の取引履歴の開示を求めることができます(民法第645条、第656条)。
 預金者が死亡した場合、預金者の預金契約上の契約者としての地位が、法定相続人に承継されることになります。

取引履歴の開示はできる?


CASE② 
CASE①で、B、C、Dは、A女が従前取引があるといっていたE銀行に、A女の過去の取引の一覧(取引履歴)の開示を求めた。開示されるか。


 上記のとおり、預金契約上の契約者の地位は、法定相続人に承継され、法定相続人が、契約者になります。
 そのため、B、C、Dは、A女と取引のあった金融機関に対して、A女の生前の取引履歴の開示を請求することができます。これを前提に、各金融機関では、法定相続人から取引履歴の開示請求があった場合の対応手続きを定めています。

法定相続人全員が揃っていなくても取引履歴の開示はできる?


CASE③ 
CASE②で、B、C、Dが兄弟間で仲たがいをしており、連名で取引履歴の開示を求めることができない場合、Bは単独で開示請求できるか。


 B、C、Dが兄弟間で仲たがいをしており、連名で取引履歴の開示を求めることができない場合であっても、法定相続人は、単独の名義で、金融機関に対して、取引履歴の開示請求をすることができます(民法264条、252条但し書き)。金融機関がプライバシーなどを理由に取引履歴の開示を拒んだ裁判において、最高裁判所も、同様の解釈を明示しています(最判平成21年1月22日民集63巻1号228頁)。

貸金庫があった場合どうなるの?


CASE④
CASE③で、Bが取引履歴の開示請求をしたところ、E銀行の担当者から、次のような連絡があった。
「A女様には当行とながらくお付き合いをして頂いておりまして、A女様名義の普通預金口座がございます。ところで、A女様は普通預金口座だけではなく、当行F支店におきまして、貸金庫のご契約もされていたようです。こちらはいかがされますか?」 そこで、Bは、E銀行の担当者に対し、CDを連れてくることができないので、B単独で、金庫を開披して、中身を確認したいと伝えた。



 貸金庫も、立派な契約のひとつです。金庫スペースを貸し出す契約ですので、賃貸借契約の一種、ということになります。
 賃貸借契約については、前回の記事で説明したとおり、賃借人が死亡した場合、賃貸借契約における賃借人の契約上の地位が、法定相続人に承継されることになります。
 そのため、法定相続人B、C、D全員が揃って申請をすれば、勿論、金庫を開披してもらい、中身を確認することができます。
 他方で、本CASE④のように、法定相続人全員で申請をすることができない場合、一般的に、金融機関は、開披請求を拒否しています。これは、金庫の開披と格納品の処分は、単なる調査行為の範囲を超え、目的財産の「処分行為」に該当するため、法定相続人単独ではなしえないものであると解釈されているためです。

以上

千葉 直愛

弁護士法人マーキュリージェネラル 所属 

アーレスリアルエステート

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