第18回 相続の放棄・承認<総論>

吉田 隆一

2019-04-19

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皆さん、こんにちは!いよいよ春がやってきましたね。そして、今年はなんといっても「令和元年」がスタートします。新入学生や新社会人の方々と同様、皆さんも新たな気持ちでスタートしていることと思います。環境がガラッと変わった中での学生生活も社会人生活も、それに対応するための自分の意思次第で自らが置かれる立場が変わってきますよね。これは、実は相続でも同じなんです。
・・・と、多少強引な展開ですが、これから複数回はわたって相続の放棄・承認についてのお話です。今回はその「総論」としてお話しますね。
 
相続が発生すると一定範囲の親族は「相続人」という地位につき、被相続人が遺言を残していない場合は法定相続人がその法定相続分によって財産を引き継ぎます。つまり、自分の意思とは関係なく、被相続人の財産を受け継ぐ地位につく、ということになるわけですね。
ただ、その受け継ぐ財産が常に「プラス」の財産とは限りませんよね。そう、被相続人がマイナスの財産(例えば多額の借金)を抱えている場合もあるんです。もちろん、マイナスの財産であろうと積極的に受け継ぎたい、という意思があれば話は別ですが、基本的にはマイナスの財産は受け継ぎたくない、という考えの方が多いと思います。
例えばこのような例です。

Aには、妻Wと子X、Yがいる。Aは会社を営んでいたが、M銀行から1,000万円を運転資金として借り入れていたほか、同業の知人Dの借入金2,000万円の連帯保証人となっていた。そのAが死亡した。

自分の意思とは関係なくこのマイナスの財産を受け継ぐ「地位」にはついてしまいますが、いろいろな事情があるとは思いますが、上記の例の財産は積極的に受け継ぎたいと思うものではありませんよね。
さらに次の例はどうでしょうか?

Aには、妻Wと子X、子Yがいる。WとYはAと同居している。Aが死亡したが、WとXは、Yが終生Wの面倒をみるのであれば、Aの遺産をYがすべて承継してもよいと考えている。

このように相続人が家族の事を慮って被相続人の財産を相続したくないと希望することもあります。

民法では上記の2つの例のように、相続の場面では相続する側の利害もかかわってくるため、財産を受け継ぐ地位にはつくものの強制的に被相続人の財産を帰属させるという方法はとっておらず、相続するかどうかについては、相続人に選択の余地を認めています。これが相続の「放棄」と「承認」という制度です。民法では、相続人に一定期間を区切り、「相続放棄」「単純承認」「限定承認」の3つの選択肢が定められていて、それぞれ相続人による下記のような意思表示を意味します。

【相続放棄】
相続の効果を確定的に消滅させる相続人の意思表示。全て相続しない、ということ。

【単純承認】
相続の効果を確定的に帰属させる相続人の意思表示。全て相続する、ということ。

【限定承認】 被相続人が残したマイナスの財産を、相続財産の範囲で支払うことを条件にして相続をする相続人の意思表示(この際には相続人固有の財産を充当しない)。

相続放棄と単純承認は一言で表現できるのですが、限定承認は一言では言い表すのが難しいので、それぞれについての詳しい説明は後日お話しますね。

次に、先ほど「一定期間」という言葉が出てきました。民法では相続の承認・放棄の意思表示をすることができる期間を設定しています。

自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月(民法915条1項)

としています。相続を勉強するうえで皆さんが避ける事が出来ない「数字」の暗記をする必須項目の一つですね。さらに、もうひとつ。意思表示をする先はどこでしょうか?そうです、繰り返し出てくる「家庭裁判所」です。あらためて覚えておきましょう。
 
さて、民法では相続人がその期間内に選択をしなかった場合などは単純承認がされたものとみなします(民法921条)。さらに、たとえ期間が残っていたとしても一度選択された相続放棄・承認の意思表示は撤回できないとされています。つまり、マイナスの財産もそのまま受け継ぐことになってしまうわけですね。したがって、この3ヶ月という期間は相当に熟慮すべき期間になるんです。

もちろん、相続以外の様々な民法上の規定と同様、意思表示であるが故の「詐欺・強迫」などを理由とする取り消しは認められていますが、相続事由に関するこの取消権の行使は、期間が他の事由よりも短く、さらに家庭裁判所に申述しないといけない、とされています。一つ間違うと相当に面倒が重なってしまう感じがしますよね。
 
そして、最後に、この期間において気を付けなくてはいけないことをお話しして終わります。それは「錯誤」(=勘違い)です。単なる動機の錯誤にすぎない場合は、無効にしたい旨の主張が認められないんです。例えば以下のような事例です。

被相続人Aが死亡し、妻Wと子X、Yが相続した。WらはAに相当の資産があるものと考えて相続を承認したところ、後日Aは多額の借金を抱えていたことが判明した。

被相続人Aが死亡し、妻Wと子X、Y、Zが相続した。Xは、YとZも相続を放棄すると考えて相続放棄の意思表示をしたところ、YもZも相続を放棄しなかった。

被相続人Aが死亡し、子X、Y、Zが相続した。子Xらは共同で相続するよりも長男1人が単独で相続したほうが相続税が安くなると考えて、Xを除いてYとZが相続放棄の意思表示をした。ところが、予想に反してY・Zにも多額の相続税が課せられた。

なんとも身近でも起こりそうな事例ばかりですよね・・・。
さて、この3ヶ月という期間、長いと考えますか?短いと考えますか?この間に葬儀や親族間の話し合いなど、いろいろなことがおこりますよね。その間に考えをまとめる事が出来ればいいのですが、迷うこともあるでしょうし、あっという間の3ヶ月になろうかと思います。その間に被相続人の財産状況を全て調べることは可能でしょうか?なかなか骨の折れる作業になろうかと思います。
ちなみに、「遺産分割協議」は、「相続人」全員による協議ですので、その協議に参加するもしないも、相続の放棄・承認の意思表示を経たあとのことになります。
受け継ぐ財産がプラスなのか、マイナスなのか。それによってどんな問題が発生するのか。それを被相続人となるべき人が予め考えると、残される家族のためにも、やはり自らの相続に向けた終活の意義は大きいものだと思いますよね。

吉田 隆一

エフピーマトリックス代表取締役/相続終活専門士事務局長

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