第17回 本当に良くある話

江幡 吉昭

2019-03-15

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なぜ遺言を作っておいた方がいいか。
それは争う族にならない可能性が高まるからです。
では、争う族とはどういう時に起きるのか?それは早くて通夜、遅くても四十九日前後に起こります。
例えばこういうことです。
みなさんの母親が亡くなったと想像してください。
通夜や葬儀やその段取りや後始末でばたばたしていましたが
大体四十九日が終わると相続人たちは落ち着きます。
そこでそろそろ亡くなった母親の銀行口座の名義変更や母親の自宅の名義変更(相続登記と言います)に法務局に行くわけです。
すると法務局の人は「お母さまの遺言ありますか?」と尋ねられます。日本では9割の人は遺言を残していませんので当然、法務局に行った皆さんは「遺言はありません」と答えるわけです。すると法務局の人は「それでは相続登記はできませんので遺産分割協議書を作成してもう一度来てください」となります。
みなさんはここで初めて「遺産分割協議書とはなんぞや?」となるわけです。ちょっと調べてみるとわかりますが、「亡くなったお母さんの遺産を残された相続人でどう分けるか」というものを書面にして相続人全員の自署押印を記したものです。
 
大体こういった場合、皆さんの中で年長者が遺産分割協議書を作成することになります。そして長男や長女が作成した遺産分割協議書を他の姉妹から自署押印もらうわけですが、ここで問題が起きます。
「ちょっと待ってよ、兄さん、こんな遺産分割協議書じゃあ、私はハンコ押さないわよ。だってお母さんの介護の面倒見たの私じゃない!なんで、兄さんがお母さんの財産半分持っていくわけ??意味わかんない!」こんな具合です。
 
そこで困ったお兄さんたちはどうなるでしょうか?亡くなった母親の銀行はロックされたまま現金は引き出せません。母親の自宅も名義変更できずそのままになります。また、母親が乗っていた車も中古車屋に持って行っても遺産分割協議書がないので売却できないという事態になるのです。
 
これが相続争いの争う族というやつです。
 
逆に言うと、遺言があれば遺産分割協議書を作成する必要がないので、法務局や銀行も遺言通りに分割が進みますのでスムーズでもめることが基本的にはありません。
 
ですので、残された子供たちが相互に争わないためにもぜひ、親は遺言を残してほしいのです。ところが肝心の親たちは遺言を書いてと子供たちに言われると「私たちが死んだ後のことを言うなんて縁起でもない!しかも私の財産が気になるなんて、なんてあさましいこと言ってるの!」と逆に怒られます。本当にこれは良くある話です。でも、そうではないんです。子供たちが争わないためにビシッと親が自分の財産をどう相続させるかはっきり書くべきです。もしくは遺言を残さないのであれば、極端な話、全財産を使ってしまうべきです。そうすれば争いようがありません。
 
ヨーロッパと違い遺言を残すことが一般的ではない日本。早く遺言を残すことがマナーとなるような世の中になってほしいものです。

江幡 吉昭

法政大学卒業後、住友生命保険、英スタンダードチャータード銀行を経て、2009年株式会社アレース・ファミリーオフィス設立。アレース・ホールディングス代表。一般社団法人相続終活専門士協会代表理事。
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