第10回 公正証書遺言(その1):公正証書遺言の要件、メリット・デメリット

酒井 勝則

2019-02-01

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はじめに

 今回から、遺言の一般的な作成方法として規定されているものの一つである公正証書遺言について、ご紹介いたします。公正証書遺言とは、遺言者が遺言の趣旨を口頭で述べ、公証人がこれを筆記するなどして公正証書を作成することによって行う遺言です。公正証書とは、公証人という法務大臣に任命された公務員が、その権限に基づき作成する公文書のことです。通常は、近くの公証役場に行って作成しますが、一定の費用を支払うことで公証役場以外の場所(自宅や病院など)に出張してもらえることもあります。公証役場は、比較的交通の便が良い、全国の主要都市に約300ヶ所設置されております。
 それでは、公正証書遺言は、どのような要件のもとで作成される必要があり、具体的にどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

民法が規定する公正証書遺言の要件とは?

 まずは、公正証書遺言に関する民法上の規定を見ていきましょう。公正証書遺言の作成についての民法の規定は、以下のとおりです。
 
(公正証書遺言)
第九百六十九条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
 一 証人二人以上の立会いがあること。
 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 三 公証人が、遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自がこれに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと
 
 上記の条文からも分かるとおり、公正証書遺言作成の明文上の要件は、①証人二人以上の立会いがあること(証人要件)、②遺言者が遺言の趣旨を口授、つまり直接口頭で述べること(口授要件)、③公証人が遺言者の口授を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させなければならないこと(筆記等要件)、④遺言者及び証人が、筆記が正確なことを承認した後、各自これに署名押印しなければならないこと(遺言者・証人の署名押印要件)、⑤公証人が、その証書が上記①から④の方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名押印することの5つです。

口がきけない者や耳が聞こえない者に配慮した公正証書遺言の特別な規定とは?

 さらに公正証書遺言の場合には、以下の特別な条文が規定されています。
 
(公正証書遺言の方式の特則)
第九百六十九の二条 
1 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自署して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口授」とあるのは、「通訳人の通訳による申述又は自署」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同上第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従って公正証書を作ったときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
 
 遺言者が遺言の内容を直接口頭で述べることができない方(言語機能障がいのある方等)の場合、前述の公正証書遺言の要件②口授要件を充足しないこととなってしまいます。そこで、民法第九百六十九条の二第1項では、遺言者の代わりに通訳人が、遺言の内容を申述したり(例えば手話等)、遺言者自身が自署(例えば筆談等)することができる旨を定めています。また、遺言者又は証人が、耳が聞こえない方の場合に、公正証書遺言③筆記等要件のうち、遺言者及び証人への読み聞かせができないこととなってしまいます。そこで、民法九百六十九条の二第2項では、通訳人が筆記された遺言の内容について手話等を利用して遺言者及び証人に伝えることができる旨を定めています。

公正証書遺言のメリットとは?

 公正証書遺言のメリットとしては、⑴公証人が作成すること、⑵偽造・変造を防ぐことができること、⑶字を書けなくても作成することができること、⑷検認手続きが不要であることです。
 ⑴については、法的知識を有する公証人が作成するため、遺言として有効な内容の記載となる可能性が高く、後に疑義が生じないように記載内容が正確となりえます。⑵については、作成された公正証書遺言の原本は公証人にて保管しますので、偽造・変造を防止することができます。⑶については、遺言の内容を直接口頭にて述べればよくて、また、署名できない場合でも公証人が署名できない旨を公正証書遺言に記載することで、遺言者の署名に代えることができますので、字を書けなくても遺言を作成することができます(民法第九百六十九条第四号但書)。⑷については、自筆証書遺言や秘密証書遺言において必要とされていた、家庭裁判所での検認手続き(民法第千四条)を要しないことから、迅速に遺言内容にしたがった話合いをすすめることができます。公正証書遺言の有無については、公証役場にて遺言書の有無を検索するシステムが設置されておりますので、必要書類を持参すれば簡単に検索が可能です。

公正証書遺言のデメリットとは?

 公正証書遺言のデメリットとしては、⑴公証人1人及び証人2人以上が必要とされる等、作成手続きに手間がかかってしまうこと、⑵作成手数料等の費用がかかることです。⑵について、公正証書遺言の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を基準にして算定されます。また、遺言によって財産を取得する対象となる人(相続人又は受遺者)が複数いる場合、それぞれの人が取得する財産の価額を算出して、その合計金額が、作成手数料を算出するための基準になります。
 
 
 次回は、公正証書遺言の各要件について検討します。

酒井 勝則

弁護士法人マーキュリージェネラル 所属 

アーレスリアルエステート

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