第10回 特別受益(1)

吉田 隆一

2018-12-10

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前回は「相続分」についてお話ししました。この相続分は、民法上、法定相続分(900条)、代襲相続人の相続分(901条)、遺言による指定相続分(902条)と続いています。
次の903条からは新たな論点に入ります。900条から902条の法定相続分と指定相続分の規定によって、はたして共同相続人間の公平性は保てるのか、ということです。「例えば兄弟姉妹の法定相続分は平等の割合なんだから、平等=公平でしょ?」と思われるかもしれませんが、実はここに多くの問題が発生するんです(実際、争族の大きな原因はここにあります)。
「被相続人の子である共同相続人のうち1人だけが被相続人から生前に多額の贈与を受けていた」、「被相続人の子である共同相続人のうち1人だけが被相続人の介護等に尽力した」などは頻繁に見受けられる争族が発生するパターンです。
それぞれの場合、皆さんはどう考えるでしょうか?前者は「1人だけがもらいすぎでしょ?」となりそうですし、後者は「他の人よりももっともらってもいいんじゃないの?」と思うでしょう。このような場合でも相続発生時の相続分は、ほかの兄弟姉妹と平等にしてしまっていいものでしょうか?
前段が長くなりましたが、民法は903条で公平性を保つために「特別受益」と「寄与分」というものを定めています。今回はそのうち903条の「特別受益」についてお話します。これはとても複雑な話ですので、ここではかいつまんでお話しますね。
 
例えば、兄弟が3人いてそのうち1人だけが生前の親(のちの被相続人)から生計の維持や事業のため、多額の資金援助(贈与)を受けていたとします。やがて相続が発生したときに、その贈与を受けていた1人は法定相続分による相続分から贈与を受けていた分を差し引いて相続する、という制度が特別受益です。
民法でいう特別受益(特別受益者)とは、被相続人から生前に贈与を受けていたり、遺贈を受けた『相続人』を指します。つまり、被相続人から相続人ではない第三者にされた生前贈与や遺贈は特別受益にはなりません。

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定(法定相続分・指定相続分に関する規定)により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。(民法903 条)。

なんだか、とにかく難しいことが書いてありますが、とにかくかいつまんで要約すると、「『それはそれ、これはこれ』はダメです」という制度です。ここに「公平性」という意味が出てくるんですね。

ちなみに、条文にある通り、生前贈与で特別受益とされるのは「婚姻や養子縁組のための贈与」と「生計の資本としての贈与」の2つです。これはその代表例を挙げると分かりやすいです。「婚姻や養子縁組のための贈与」の代表例は高価な嫁入り道具や高額な持参金、「生計の資本としての贈与」の代表例は住宅の購入や留学費用(兄弟間に高額の差がある場合)などです。高価や高額としているのは、判例でも「おおよそ一般的にありうること」については特別受益にはあたらないとしているからです。度を超えた部分が特別受益、というわけですね。

そこで質問です。

被相続人が契約者及び被保険者であり、共同相続人のうち1人が受取人となっている養老保険契約に基づく死亡保険金請求権は、特別受益に当たるでしょうか?
 
そもそも「生命保険金は受取人固有の財産」ですので、特別受益には該当しないのでは、と思いますよね。ところが、判例ではここにも特別受益の考え方が適用されるんです(最高裁判所第2小法廷決定/平成16年(許)第11号/平成161029日)。
どういうことかといいますと、被相続人が保険料を支払っていた結果として相続人の1人が保険金請求権を取得したときは「共同相続人間の公平性」に欠ける可能性がある、というわけです。ただし、この公平性については「著しく公平性に欠けると判断できる特段の事情がある場合」に限られます。特段の事情というのは、保険金の額や同居の有無、被相続人に対する貢献度合などの事情です。これらを総合的に加味して判断するそうです。つまり、著しく度を超えた保険金を受け取るような場合は特別受益に該当する、というわけですね。
 
本日は「特別受益とは」についてお話しました。次回も引き続き特別受益についてお話しますが、次回は特別受益の計算についてお話しよう思います。

吉田 隆一

エフピーマトリックス代表取締役/相続終活専門士事務局長

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