第14回 事実上の相続放棄

田中 誠

2018-10-19

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相続放棄という言葉を聞かれたことがあるかと思います。一般的には、相続開始後3か月以内家庭裁判所相続放棄の申述を行ってします。家庭裁判所に認められますと、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとされます。つまり、故人のプラスの財産も、借金のようなマイナスの財産も相続しないこととなります。これにより、故人にお金を貸していたような債権者は、相続放棄した遺族に対して、借金の返済を求めることができなくなります。

一方で、法律上の相続放棄は行わなかったものの、実際には財産を取得しないという、事実上の相続放棄、も行われています。
1. 相続開始後、自己の相続分を他の相続人に譲渡する場合、
2. 特別受益による相続分皆無証明書を作成する場合、
3. 遺産分割協議の際に、相続財産の取得を希望しない相続人の相続分を0として遺産分割協議を成立させる場合、
等があります。

今回は、相続分を0とする遺産分割協議について、みていきましょう、

 これは例えば、複数の相続人のうちの一人に相続財産を集中させたい場合にとられる手段です。一人以外の相続人の相続分割割合を0として遺産分割協議書を作成するということで行います。これにより、登記申請上は法律上の相続放棄をしたのと同様の効果を持たせることができ、相続開始後3か月を経過してしまい相続放棄の手続きができなくなってしまった場合でも、一部の相続人の相続分を0として登記申請が行えることとなります。
 
 但し、このような遺産分割協議書は、相続人の間での決め事であり、故人に借金があった場合等の債権者には何の影響も及ぼしません。
 そのため、遺産分割終了後に債権者に借金の返済を請求された場合は、たとえ相続財産を1円たりとも貰っていなくとも、それを理由に債権者に対して断ることはできません。
 つまり、プラスの財産は相続していないのに、マイナスの負債のみ負担する可能性もあるということです。
 この点が法律上の相続放棄と大きく異なる点となります。
 借金などの負債がある場合に、債権者に返済を請求されないようにするためには、財産を承継する者が負債についても全て相続することについて、債権者に同意を得たうえで遺産分割協議をする必要があります。
 以上からの結論ですが、相続人の一人に財産を全て相続させる場合は、借金等は後日判明することもあるため、後日の紛争を防ぐ意味でも、基本に立ちかえり家庭裁判所に相続放棄の申述をしたほうが賢明です。

生命保険は相続放棄しても受け取れる、

相続と生命保険は、原則として別物として扱われるため、相続放棄しても、問題なく生命保険金を受け取ることができます。
過去の裁判例で、生命保険は相続財産でないとされて以降、生命保険の契約が何であれ、相続放棄をしても保険金はもらえることになりました。
但し、生命保険の受取人として、被相続人ご自身を指定している場合は、相続放棄をすると保険金を受け取ることはできなくなります。
また、税金の世界では、生命保険金は相続財産である、と認定されたままですので、みなし相続財産として、相続税を払う必要も出てきます。

田中 誠

長野県生まれ
横浜国立大学経営学部卒業

相続終活専門士

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